「では、これよりハンター試験を開始いたします」
その一言で、ざわついていたこの場所が、一気に静まった。
ピンとした雰囲気に、少し体が強張るのを感じる。
「こちらへどうぞ。…さて、一応確認いたしますが、ハンター試験は大変厳しいものもあり、運が悪かったり実力が乏しかったりするとケガしたり死んだりします」
うん、知ってる。だから受けたく無かったのよ。
「先程のように受験生同士の争いで再起不能になる場合も多々ございます。それでも構わない…という方のみ、ついて来て下さい」
構うわ!…でも止めたらイルミさんにイロイロされるんだよ!
とりあえず、サトツさんについて行く。
周りの全員もそれにならっていた。
「承知しました。第一次試験404名全員参加ですね」
その言葉と同時に、サトツさんの足が速くなっていく。
うわぁ、始まっちゃったよ…。
そう思いながら、リュックサックからあるモノを取り出す。
「トルテ、お前何してんの?」
「ローラーブレード履いてんの」
カチャカチャと足に装着して、再び走り出す。
いや、滑ってるんだけど。
「申し遅れましたが、私一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場へ案内いたします」
「二次…?ってことは一次は?」
「もう始まっているのでございます。二次試験会場まで、私について来ること。これが一次試験でございます」
そう、その一次試験が一番厄介なんだ。
だって私、持久力ないもん。
因みにコレは、此処に来る前にイルミさんに買ってもらいました!
「トルテお前用意周到だなー」
「キルア君だって人の事言えないじゃない」
2人で話しながら人を追い抜いていくと、後ろから怒鳴り声が聞こえた。
「おい、お前ら汚ねーぞ!そりゃ反則じゃねーかオイ!」
レオリオ!
主人公組キタコレ!
ああ、原作のやりとりを生で見られるなんてオタク冥利に尽きるってもんだわ。
「何で?」
「何でって、おま…こりゃ持久力のテストなんだぞ」
「違うよ、試験管はついて来いって言っただけだもんね」
「ゴン!てめ、どっちの味方だ!?」
「どなるな、体力を消耗するぞ。何よりまずうるさい。テストは原則として持ち込み自由なのだよ」
「そうそう、私達はあなた達が靴を履いてるのと同じで、たまたま持ってきてるものを使ってるだけだもーん。ま、あらゆる用意をしとくっていうのもハンターとして大事なんじゃない?」
まあ、そう偉そうに言っといて、内容を知ってる私は世界単位の反則ですかね。
「…ねぇ、君年いくつ?」
「もうすぐ12歳!」
「……ふーん」
おお!キルア君がゴンと話を!
ああ、お友達ができるのねキルア君、お姉ちゃんは嬉しい!
「やっぱオレも走ろっと」
ダンッと音を立ててスケボーから降りたキルア君。
やばい、降り方かっこいい。ヒュー。
「かっこいー」
「オレキルア」
「オレはゴン!」
「私なまえっていうの、よろしくね!」
「トルテ、なまえってなんだよ」
「私のもうひとつの名前。良かったらなまえの方で呼んでね」
「ちぇっ、わけわかんねー。…なぁ、オッサンの名前は?」
「オッサ…。これでもお前らと同じ10代なんだぞオレはよ!」
「「ウソォ!?」」
「あ、10代なら私より下だねー」
「は!?お前いくつだよ」
「内緒!」
「んー、でも言い方で言うと20歳はいってんだろ?逆に若く見えすぎるだけで30とか40だったり…」
「は!?あんたふざけんじゃないわよ!まだ22よ22!四捨五入すりゃあまだハタチよ!?うら若き乙女になんて失礼な!」
「冗談にキレてんじゃねぇよ!お前そもそも16とかくらいに見えんぞ」
「なまえ若く見えるねー」
「実際若いの!いい?女は25までは10代に限りなく近い気分なの。29までは20歳って名乗りたいの。30からは永遠の27歳でありたいの!女の年齢事情は複雑なんだから!」
手に力を込めて力説すると、若干引かれた。
なによなによ。
女の一年は地球より重いって知ってるかコノヤロウ。
私は流れてない涙を拭っておいた。
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