気持ち悪い。
吐き気がする。
首でも吊りたい。

「……」
「ほら、今日の訓練やるよ」
「……」
「駄々こねないでよ」
「駄々こねてなんかない!」


大声で主張すると、イルミさんは「はぁ…」と息を吐いた。


「私は殺した」
「うん」
「あの男と同じだ、私を殺そうとしたあの男と」
「違うよ、だってそいつはまだ君を殺してないでしょ」


ああそうか。
私、あの男より最低で最悪なんだ。

「イルミさん」
「何?」
「私を死なせて下さい」
「………」
「イルミさんが知っている限りで私を一番残酷な死に方で死なせて下さい」

私に制裁を与えて欲しかった。
少しでも許されたい。
少しでも報いがしたい。

「いいよ」

私は目を瞑った。

なにで死ぬのかなぁ私。
毒を致死量盛られるかなぁ。
そんなんじゃ軽いよなぁ。
致死量にギリギリいかない薬飲ませてー複雑骨折させてー沢山傷つけてー死なないぐらいに沢山沢山刺してーそのまま放置で餓死とか結構キツいかもー。

やだなぁ。
痛いのも、苦しいのも、死ぬのも。

でも、名前も知らないあの男も、同じだったんだ、きっと。
だから私も、同じように。
なのに、なのに、なのに。
なんで、待てども衝撃が来ないんだ。


「なんで…殺してくれないんですか」
「一番残酷な死に方」
「そう、それで殺してくれるって…」
「殺すとはいってないよ。今の君に一番残酷な死に方はこのままのうのうといつか死ぬまで生きる事だと俺は思うよ。それにさ、君は生きたいって言ったよね。そのために拾うよう俺に請うて、そして俺は君を拾ってやったんだよね?そして君は生きる為になんでもしてきたよね。毒にも耐えたし、訓練にも拷問にも耐えてみせた。そして戦闘訓練だって死ぬと分かってる相手を死ぬ直前まで苦しめたよね。それが殺してないから私は綺麗な手ですって胸を張って言える?俺はさ、君を無償でここまで育てたよ?なのに君は、人を殺した事で全部今までの俺が君に費やした時間を無駄にしろって平然と言ってのけるんだね。あのね、それはね、ただの甘えで逃げなんだよ」

…合っている。間違いが無い。全て正論だ。

「イルミさんが好きです」
「……」
「キルア君が好きです。ミルキさんも、カルト君だって私は好きです」

此処は辛い。それでも嫌いにならなかったのは、みんなが好きだったからで。

「でも、その大好きなみんながやっている事は、私にはとてつもなく怖くて。甘えだっていうのは分かっているんです。でも、今はただ自分が許せなくて…、イルミさんも今はちょっとだけ許せない」
「…そう」
「だから、背中貸して下さい。鼻水と涙擦り付けますから」
「…そしたらこの服捨てるからいいよ」



生きる。
私は死ぬまで生きる。
きっとそれが背負うって事だ。

でもそれは私には酷く重くて、だから今は泣かせてもらおう。


明日からまた生きられるように。


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