「はっ!」
「…くっ」
「いいよ、そのまま続けて」
拾われて、訓練を始めて大分たった今(多分二年近くたっている筈)、私は対戦もするようになっていた。
相手はイルミさんが連れて来た侵入者とかが大半。
最初は死にかけるギリギリでイルミさんが救出といった感じだったが、最近は私が圧倒できるようになってきた。
なんだろう、どんどん体が軽くなっていくみたいだ。
「ちっくしょう…死ね!」
「よっと」
私を殺す気の一撃も楽々よけられるようになった。
「もうっ、諦めて下さい、よっ!と」
「うるせぇ!」
まあ、諦めたらきっと殺されちゃうもんな、イルミさんに。
でも私が負けても殺されちゃうんだよね。
…今こんなに、私と同じで生にしがみついている人が、殺される。
あっけなく。
最初は怖くて涙が止まらなくて、そして吐いた。
今、私の感覚はどうやら麻痺をしているよ。
「ごめんね」
私も生きたいんだ。
「あ゙あ゙ああぁぁぁ!」
男の足を掴んで、ボキリと折る。
そして、思い切り顔面を蹴り、鳩尾を力いっぱい踏みつけた。
「ごめんね、痛い?……もう意識無いかな」
終わりましたイルミさーん。と声をかけた。
「こないだより早いね。うん、大分良くなった」
「本当ですか!?」
「うん、これなら次のステップいっていいね」
「…次?」
って、なんだろう。
もしかして、もっと強い人と対戦かな?
「そいつ殺して」
「…は?」
どうやら私の耳が可笑しくなったようだ。
「すみません、もう一度…」
「聞こえなかった?」
殺せって言ってるの。そいつを。
…そいつ、って、どいつ?
この、男を?
「そ、んな事」
「出来ないって?」
「…だって」
「だってじゃないよ。その男はさ、君が殺さなくても死ぬんだよ?分かってる?君はただ、男が楽に死ねる所を、死ぬ前に苦しまるというある意味殺すより酷い事をやってるんだよ?今」
「でも…でも…っ」
「君、言ったよね?自分は弱いって。でもさ、多分君才能はあると思うよ?じゃなきゃ短期間でこんなにあそこから上達しないし」
「……私、私を殺そうとしたあいつを、倒せれば、それぐらいの力さえあればそれで…」
「だから、次は手加減も覚えなきゃね?自覚あって殺さなきゃ」
「え…?」
なんだろう、なんだろう、おかしい、今の台詞。
だって、私は、まだこの男を殺してなくて。
手加減ってどういう事?自覚あっての?え、いや、だって。
「君の攻撃で、もうとっくに死んでるんだよ、そいつ」
こんなの、嘘だ。
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