「あ」
「……」
「こ、こんにちは」
「こんにちは」


私が部屋に戻ると、ゴトーさんが居た。
多分、掃除とかしてくれてたんじゃないだろうか。
今まで一度も出くわした事ないのに…いつも時間把握してやってくれてんだろうな…。


「今日はお早いですね」
「えっと、あの、イルミさんがですね…病み上がりだしと言って下さいまして…」
「そうですか」
「はい…」
「……」
「……」

ンオオォォ!この重い空気はなんぞ!?つら!

「あの…!」
「はい」
「ゴトーさんって私嫌いですよね!」

あれ?私何言ってるかな。

「…す、すみません」
「大丈夫です。事実ですからね」
「あう…ですよねぇ…」
「お前、一般人だろ」
「はい…まぁ…ハハ」
「イルミ様もミルキ様もキルア様もカルト様も…あなたを気に入っておいでに見える」
「…え、そうで…しょうか…」
「自惚れんなよ。…奥様もなんか服着せんの楽しんでおられるし…皆様にお前のクソ甘い思考が移ったらどうしてくれんだよ、あ?」
「い、いえ…あの…そんな…皆さんしっかりしてますし…私の思考に引っ張られるような事はないかと…」
「オレもそう思う。だけどなぁ、そういうのは移るんだよ。ウイルスみたいにな」

私ウイルスっすか…。
ていうかゴトーさん怖いよー…ううぅ…っ!

「例えば、最近お前倒れて死にかけただろ。あんなの普通放っておくだろ。イルミ様は付きっきりで看病なさるし、カルト様はお前の好きそうな食材主張されるし。明らかに多少なりともお前が影響与えてんのは確かなんだよ」

確かに。
毒で死ぬなら、そこまでと見限って普通の一家だ。
…それなのに、私がもし、もっと、原作が壊れるくらいの影響を…与えてしまったら…。

「もしお前がゾルディック家に害をなすと判断できた時には、自らの死を覚悟でお前を始末する」

ひいいいぃぃぃ!やっぱり、そういうのは置いといてとりあえずゴトーさん怖いいいぃぃ!


ゴトーさんに怯えていると、ドアが突然開いた。


「あれ、ゴトーいたの」

うおおおぉぉん、イルミさん勝手に部屋入んなって言ったのにまたやってるよ!しかし今はグッジョブ!と心の中で親指を立てる。

「今日は早くお部屋においでだと知りませんでしたので、掃除させていただいた所でした。今退散させていただきますよ」
「ふーん。おつかれ」
「失礼します」


ドアが閉まる音が聞こえて、ぶはぁーと息を吐く。


「何、どうしたの」
「なんでもないですー」

何だろう。此処に来て私は優しさに慣れていたのかもしれない。
いや、死にかけたり毒盛られたりはあるものの、なんやかんやで衣食住訓練を与えられている。拷問も与えられているけども。
そう考えると、原作と比べてゾル家の優しさは…確かにやばいのかもしれない。


「イルミさーん…」
「何」
「強くなりたいです」
「…そう」


生きるため。
そして、なんやかんやで嫌いじゃない此処に、迷惑をかけてしまわぬように。

出来れば、原作が始まる前に…帰れたらいいのだけど。



「じゃあとりあえず明日からメニューは倍ね」
「えっ」


prev - next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -