「ほら、ご飯」
「ありがとうございます」

その時私は、とてもお腹がすいており、目の前のご飯に歓喜していた。ごっはんっ、ごっはんっ。

「いただきまーす!」


思い切りパンにがぶりついた途端、イルミさんは確かにこう言った。


「あ、毒の量間違えた」

え。
あまりの驚きに、私はすぐ吐くという行為をうっかり忘れていた。

「何言って……」

そこまで言った所で、身体に力が入らなくなり、どしゃりと地についた。

「げほっ」

口の中で鉄の味でいっぱいだ。ということは私は吐血しているのか。

「あ゙、げ…、どくざ…ぁ」
「いやー、これ解毒剤ないんだよねー」
「なん…っ」
「この薬最近慣らしてたやつだから、今日が初めてじゃないし…運が良ければ死なないんじゃない?」

疑問系とか私の不安を煽るだけじゃないかこのやろう。

「さいっ、あく…」

私いつかイルミさんに殺されるんじゃね?と思った事がある。
その通りになるのだろうか。
せめてなるべく吐こうと、トイレまで行くために地面を這いながら移動する。

「イル、ミさ…」
「何?」
「あだしが…じんだら…イ、ルミさ…んを…呪ってやり、まず…」
「…うん、楽しみにしてる」


楽しみにしてんじゃないわよ。







「げほっ、がっ…」


吐くと、少しは楽になった。
とはいえ、全身に激痛が走り、汗はだくだくで、口の中は鉄の味でみちている。
安心できるわけじゃない。

私はぐいっと水を沢山飲み、もう一度吐いた。
せめてこれ以上毒を吸収しないように。


あとは持ちこたえるしかないと、自分の部屋に向かう。
壁に伝いながら、ゆっくり歩いていく。
正直目は霞んでるわ、呼吸は上手くできないわ最悪だ。


「あー、も…う、前見えない、わー」

目の前が真っ白である。雪景色という時期でもないのに何事ですかね。
…最悪。明らかな殺意をもってやられたんじゃあるまいし、死因は「うっかり分量間違えちゃったてへぺろ」である。
やりきれない。
本当にやりきれない。


「絶対、イルミ…さんをっ、末代まで呪ってやる」


その言葉を最後に私は意識を手放した。
これ本当に呪えそうだなぁ。

…所謂、私は生きるためのトリップで失敗したというわけで。
つまりあっちの世界からもこっちの世界からもリタイアだ。
いやーでも私頑張ったってマジで。
まあ、ゲームオーバーだって仕方ないさ。リセットはありませーん。
さてさて、私はイルミさんを呪いに行きますよサヨーナラー。


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