「きっみがー好きぃーだからぁー!ボクは此処に、いるんだよっ」

私が今歌っているのは所謂アニソンである。
こっちにくる前はよくカラオケで歌ったものだ。

「あのねっ、あのねっ。好きだから、君を殺したいーそれが私の愛なんだよー、てへっ」

ルンルン気分でヤンデレの曲を歌っていると、イルミさんに出くわした。
…げ。

「…趣味、悪いね」
「ち、違います!これは前の世界のアニメであった歌なんです!私がそういう性格なわけじゃ…っ!」
「アニメ…あぁ…ミルキが好きなやつか」
「ミルキ…さん」


ブタ君か。
あんま凄くないように見えて、頭いいしなんか実は色々凄い人なんだよね。
それなのにニートなんだよね。


「せっかくだから会う?」
「…はぁ」

せっかくですしと頷くと、じゃあついておいでと言われたのでイルミさんにひょこひょこついて行く。







「ミルキ」

ガチャ!といきなり開けたイルミさんに「ノックくらいしろよイル兄!」とミルキさんが毒づいていた。
間違ってはいないと思う。ニートじゃなければ。

「別にいいでしょ」
「よくな……、女?何?恋人紹介?」
「冗談」

ハッと鼻で笑ったイルミさんに「こっちこそごめんだ」と内心毒づいておく。

「こないだ拾ってペットにした」
「ふーん。顔はもっとレベル高い方がいいと思うけど…まぁ、兄貴の趣味にはとやかく言わないって。遊ぶくらいはできるかな。俺にも今度かしてよ」
「だから私訓練犬方面なんですって。ここの兄弟はどいつもこいつもアッチ方面に考えおって、脳内厭らしい」

ボソリというと、ミルキさんが目をカッと開いた。
何…こわい。

「…クルミちゃん」
「…へ?」
「お前クルミちゃんの声にソックリ!」
「クルミちゃんって何ですか…」
「お掃除天使クルミちゃん知らないのかお前!」

知りません、なんせ私は、別世界。
あ、五七五になった。

「ちょっと『悪いやつはクルミがグチョグチョにしてやるみゃんっ』って言ってみて!」

クルミちゃん怖!

「わ、悪いやつはぁ…」
「もっと力を込めて!」

ええぇ!

…私も一応オタクの端くれ。
カラオケでキャラマネした実力とくと見よ!

「悪いやつはぁ…クルミがグチョグチョにしてやるみゃんっ」
「やべー!お前すげぇクオリティだよ。あとでヌコ生やってみねぇ!?」
「マジですか!そこまで言われるとやりたくなりますねぇ!」


ワイワイとミルキさんと盛り上がった。
やはりオタク同士、趣味や話が合う。


「じゃあ今度はこの台詞を…」


ドガァン!


「…イルミ…さん…?」

ふと、イルミさんの方を見ると…壁が壊れていた。…えっ?

「あの…」
「訓練」
「え…」
「訓練」
「今日はもう終わりじゃ…」
「行くよ」
「なんでですかぁー!ひどい!」


ぐいぐいと腕をひかれ、訓練室へと向かうはめになった。
…本当になんでだ。


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