「お前体力ねぇなー」
「すみません」

ぶっ倒れて息を整えていると、キルア君が覗き込んできた。眼福だが今はそれどころではない。

「そーいやお前なんていうの?」
「えっと…私は」
「トルテだよ」

なまえと、とっさに言おうとすると、イルミさんに阻まれた。
…ですよねー。

「ふーん、トルテか。オレらと名前似てるな」
「母さんが付けたからね」
「え!?だってコイツ…」
「ペットに名前つけるのは当たり前だってさ」

あ、今キルア君が可哀想な目で見た。つらい。

「まぁ、ここでの名前って割り切れば問題ないかなーって」
「ポジティブだなー」
「そうでもないよ?」


生きるためだもの。
そう心で呟きながらキルア君を見ると、まるで不可思議なものを見るような目に変わった。


「俺ちょっとここで針手入れしてから行くから、2人は先に行ってて」
「はい」
「うん」







「あの、トルテはさ…」

俯いてそう口にしたキルア君になんだい?可愛い可愛いキルアくーんと耳を傾ける。
「どうしてここに来たの?」
「んー、死にたくないから」
「どういう事?」
「私ちょっと殺されかけてねー。あ、イルミさんにじゃないよ?普段の訓練で死にかけるのはこの際置いといて。まぁ、そんで殺されないために今強くならなくちゃいけないの」
「わけわかんね」
「だよね。私もそう思う」

そもそもゾルディックが危険なのにねぇ。

「それに、イル兄…と…」
もごもごと口ごもるキルア君に私は口を開いた。
「あのね、イルミさんはね、私を住まわしてくれて、毒入りだけどご飯もくれて、拷問の訓練はちょっと理解できないけど…鍛えてくれる。だから私イルミさんには何だかんだで感謝してるんだー」

キルア君は少し下を向いた。

「さぁ、今度はキルア君が答える番だよ?キルア君はイルミさんが怖い?」
「………うん」
「それは仕方ないの。だからね、キルア君…」

私はキルア君の頭を撫でた。
途端、キルア君に手を叩かれた。

「あ、ごめんね…」
「……わるい」

会ってばかりで信用しろという方が難しいかぁ…とちょっと赤くなった手を撫でる。

「キルア君。私の事は信用しなくてもいいから…でも友達の事は信用して、友達からの信頼も裏切らないであげてね」
「オレ…友達なんて…」
「きっとこれから出来るから。一度決めた事は曲げないように!分かったかな?」
「わかんね」
「まぁ、どうしても無理な時は私のとこにおいで。できる限り力になるから」
「弱いくせに」
「なにをー!」


だいたいなんでキルア君はそんなに強いのよだとか突っかかると、キルア君は「お前も頑張れよばーか」と今日一番の笑顔を見せてくれた。


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