「そろそろ両親に君の事言うよ」


あれから3日。
因みに昨日はひどい筋肉痛と体のだるさ(多分毒の余韻)で動けないのにメニュー増やされた。この鬼畜猫目と心の中で毒づいておいた。
相変わらずの拷問のような訓練を受けていると、イルミさんは突然そう口にした。
え。


「まじですか」
「まじだよ」

…まじだよって返された。

「隠すつもりもないし、拾ったからには親に一応言うものでしょ?」
「まだ…死にたくないです」
「酷い言われようだなぁ」


依頼じゃあるまいし、君なんて殺さないよ。
そう口にしたイルミさんに、依頼だったら殺すのかとか、そうじゃなきゃ殺すに値しないんですねとか色々言いたくなったけれど、ぎゅっと口を噤んだ。
地雷は踏まない主義なんで。


「まぁでも、捨ててきなさいって言われたら俺ミケの居る庭に放り込むからよろしくね」
「やっぱりそれ死ぬじゃないですかっ!」


鋭く突っ込む彼女にイルミは少し首を傾げた。

(そろそろ俺に反論とか逆らうとか出来なくなっている筈だけどなぁ…。まぁ、面白いから今はいいけど)





「拾っちゃった」


犬や子猫を拾っちゃったみたいなノリで私は紹介された。
おいおい、私は猫じゃないにゃん!
あなたのがよっぽど猫ですよ!
というか生シルバ・キキョウ怖いよおおぉぉ!


「飼ってもいいでしょう?」

…だんだんおかしくなってきた。
なんだよイルミさん、あなたは小学生か。
そしてシルバさんもキキョウさんも表情変えて下さい私つらい。

「無理ならいいけど」

ちょっとまて。聞き捨てならない言葉が…っ!

「ちょおおぉぉー、イルミさんん!もっと粘って下さい!妥協されたら私死ぬんですよ!?」
「別に俺は困らないし」
「私が困るというか死にたくないから此処に来たって言ったじゃないですか!頑張って下さい!」
「…んー、じゃあちょっとだけ頑張ってあげる」
「任せましたよ!」


頑張ると口にしたイルミさんを信用して送り出すとイルミさんは再び口を開いた。


「…ねぇ、飼ってもいいでしょう?」
「イルミさあぁぁん!あなた頑張るって言ったじゃないですか!全く変わってないじゃないですか!」
「えー、俺頑張ったよね?」

くるりとシルバとキキョウの方を向くと、首を傾げながらそう尋ねた。

「ううぅ…」


認めてあげてお願いだから!おたくの息子さん頑張ったから許すって!

手を擦り合わせながら目を瞑っていると、キキョウさんに「あなた」と声をかけられた。


「は、はい!」
「お名前は何というのかしら」
「あ、なまえです…」
「まぁ、もう名前があるのね!」

いや、そりゃあ20年この名前と付き添ってますから。

「それはイルミが付けたのかしら?」
「え…いえ」

きちんと両親から頂いた大事な名前であります。

「じゃあ…ねぇイルミ…私がこの子の名前付けてもいいかしら?」
「いいよ別に」
「えぇ!?」

なんか私改名の危機!?

「子供やペットの名前を付けるのは当然だもの」


キュインキュインと音が鳴り、私を舐めるように見る。
こ、こわい。


「あなたの名前はトルテにしましょう!」


随分…美味しそうな名前ですね。
なんだろう。死の危機は去ったっぽいのに涙が出てきた。


「あらあら!泣く程嬉しいのねぇ。なかなか素直なペットだわぁ」

そしてやっぱりペットなんですね!


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