私はイルミさんにあらかたの説明をしたけれど、本の内容はあまり話さなかった。
話せるわけがない。


「そういえばさ」



私に目をやったイルミさんが、「なまえは俺達の事を知ってるんだよね?だったら将来キルはどうなるか分かる?」と質問してきたのだけれど、私はというと上手く息を吸えずにコヒューコヒューと喉から変な音が出ていた。
答えられるわけないじゃないかこのやろう。

なんでそんな事になっているかというと、ご飯に毒が入っていたのである。
ご飯は…イルミさんから「はい」と渡されたパンだ。
そういえば食べていないと気づいた途端、思い出したようにグーグー主張し出す恥ずかしいお腹を静めようと、パンを思いっきりがぶりと食べた。…そこまではいいとしよう。
しかし、それを食べた途端、体がじわじわと熱くなり、汗がだらだらと出てきた。熱いのに寒気がするってなんなんだ。

「イルミさん…これ」
「大丈夫だよ、俺が初めての離乳食で混ぜられてたレベルだし」

いやいやいや、何考えてんすか。
赤ちゃんでこんなん死ぬだろうよ!

「腕立て1000回、腹筋1000回、背筋1000回」
「へ」
「分からないの?倍にしようか?」
「でも毒まわっちゃ」
「はい倍にし「喜んでやらせていただきます!はいいーち!」

慌てて腕立てを始める。
脳みそはぐわんぐわんするし、汗はだらだらぽたぽた滴ってるし、吐き気はするし、熱いし、寒いし、つらいし、痛いし最悪だ。
最初会った時はもうちょっと優しげでユニークな印象あったけど今となってはそれ誰だ。
畜生、覚えてろ!元の世界に戻ったらマジックで、イルミさんの顔に鼻毛追加してやらぁ!





「コヒュー…コヒュー…」

先程の威勢はどこいったのか。

「なまえは弱いねー」
「コヒュー…だ…コヒュー…じ…コヒュー…ぶ…」
「そんなの聞き取れないよ」
「わた…私…ぁ…ぁんま…りぃ…本…読ん、でなかっ…たか…ら、わかんな……」
「ふぅーん」


勿論、原作は舐めるようにがっつり見ていたので嘘だ。しかし息が荒いせいもあり嘘は悟られなかったようだ。
それに対してつまらないなぁと呟くイルミさん。
今は仕方がない。生きていくためだ。
でも絶対、私に生きていけるだけの力がついたら…ここを出てやるっ!




(依存なんてしてやらない)

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イルミさんが思うより、ヒロインちゃんは結構強い子です


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