「痛い、痛いってばトウヤ君!」


ぐいぐいと強く腕を引かれて家までの道を歩く。
てか本当に痛い。ちょっと赤くなってるってコレ!


「離してよ!」

あまりの痛さにだんだんイライラしてトウヤ君に思い切り蹴りを入れた。
トウヤ君は前のめりになって、私に蹴られた腰をおさえている。
すると、ぐるりを私を向いて強く睨まれた。
何よ、トウヤ君だって悪いんじゃない。

私の腕は手形に赤くなっていてヒリヒリする。



「ほら、2人共お互い様って事で…ね?」

ニコッとNさんに微笑まれる。

「え、ぬ…さ…」
「僕の事はお兄ちゃんと呼んでね」
「え、キモ」
「ちげーよ、バカ女。俺らは一応兄弟って設定なんだから兄をさん付けっておかしいだろ。なあN」
「トトト、トウヤ君だって呼び捨てじゃん!」
「兄を呼び捨ては聞いたことあるけどさん付けは聞いたことない」
「…じゃあ、私もNって呼ぶ」



兄弟?冗談じゃないわ。
私のお兄ちゃんはー…。


…お兄ちゃん。

そういえば、本当の私のお兄ちゃんは。
思い立って携帯を取り出す。
アドレスからお兄ちゃんを出して電話をかける。



ーこの番号は、現在使われておりませんー



「ひっ……!」


思わず携帯を落とした。
カシャンと鈍い音がしたけれど、どうやら携帯は無事だ。少々傷ついてしまったがー…それどころではない。


「うぁ…」


じわりと目頭が熱くなる。
急に怖くなった。この世界の変化が。
覚えていなかったら私の記憶から実の兄が消えていたという現実も。


「返して」


思わずトウヤ君にしがみつく。


「私の世界を返してよ…っ」


退屈だけど楽しい私の世界を。


「バッカじゃねーの」

トウヤ君の低い声が静かに響いた。


「もう世界が変わったんだよ。二度と戻んな…「トウヤちょっといじめすぎ」


絶望したところでNが割って入った。


「大丈夫。僕達が滞在しるのは短期だし、それが終わればこの世界は元通りだよ。だからめったにない体験だし楽しむといい」


拍子抜けしてへたり込んだ私をNが起こそうとするが、足に力が入らなくて起き上がれない。


「トウヤ、おぶってあげなよ」
「は、なんで俺がー…」
「もとはといえばトウヤがいじめたからじゃないか」
「…ちっ」


トウヤ君は私をひょいと俵担ぎした。
…ちょっと待て。

「トウヤ君」
「何」
「ぱんつ見える」
「白だね」
「白だねじゃねーよNさんや」
「しかもピカチュウのパンツだね。いいね、どこに売ってるんだい?」
「ちくしょ…ピュアイノセンツ…っ!変な目で見てないのは分かるけどそんなキラキラした目で私のパンツ見るな。因みに女物ですからこれ。そしてトウヤ君はおんぶに変更して下さい。パンツ丸見えで道歩くとかどんな羞恥プレイだよ」


Nさんはちょっとしょぼくれて、トウヤ君は舌打ちしながらおんぶに変更した。

畜生、さっきのシリアスどこいったんだ。


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