うきうきな気分で自販機へ行ったのだけど、今日もいちごオレくんには出会えなかった。うーん、残念。
いつも一緒に食べる友人は今日は彼氏さんと食べるらしく、にこにこしながら外のベンチに行ってしまったし。さて、今日はどこで食べようか。自分の席だと窓際だし、ちょっと暑いかなー。まぁいいか。
教室に入るとクラスメイト達は既に思い思いの場所で昼食をとっていた。いつもと変わらない穏やかな1年1組。窓際の前から4番目、なんとなく自分の席の方に目をやると視界に入ったのはふわふわで少し明るい茶色の髪。
あ、いちごオレくん だ。
ん?どうして1組にいるの?しかも私の席の近く!どうしよう、恥ずかしい。…でも鞄のなかにお弁当はいってるし。席つかないとご飯食べれないし、お腹空いたし…まあいいやとにかく席に着いてお昼にしよう。変にどきどきしながら席に近づく。
「あ、いちごオレのコだぁ」
ふいに声をかけられて、間抜けな返事しかできない私。あれ?知り合いだったの?と、いちごオレくんに尋ねるのは栄口くん。うん、よく自販で会うんだ〜。へー、そうなんだ。
あぁ、わたしのこと、いちごオレのコ って。私が彼のことそう呼ぶように、彼もわたしのことをいちごオレの女の子と認識していてくれてるのが嬉しくてたまらなかった。
「 ね、いつも買ってるよね。いちごオレ。」
少しでも話しをしたくて、彼に声をかけると、
「うん、おそろいだね〜」
人なつっこい笑顔付きのその言葉に、顔が熱くなる。
じゃ、おれ、さっそくこれ写さなきゃ!と、手に持っているのは社会の宿題プリント。5限目終わったら返しにくるね〜。そう言って手をふりながら去ってゆくいちごオレくんに私も遠慮がちに手をふり見送る。
いちごオレを一口飲み込むと喉の奧がグっと熱くなった。ごまかすように続けてそれを流し込む。
あ、名前。また聞けなかったや。
(20110311)