「ジャローダ!そこでリーフストーム!!」
「ジャロ!!!」

ジュゴンのふぶきにジャローダのリーフストームが加わって、葉っぱが凍りつきキラキラと太陽に輝きながら舞う。やっぱ屋外ステージだったらこれが綺麗なんだよな〜なんて考えて、考えて、考えて‥さっきのミクリさんからのメールをシカトしていた。

「ジュゴン、ジャローダ、今日も調子いいね!」
「きゅる!」
「ジャロロ〜」

嬉しそうに擦り寄ってくる2匹の頭を撫でると、まだ何かをしたそうにうずうずしている。手持ちの中でも特にパフォーマンスやコンテストが好きなんだし、しょうがないか。次に向けて新しいコンビネーションでも考えるかなあ、なんて2匹を見ながら唸る。やる気満々で素晴らしいよね。

「じゃあ、ちょっと今までにやったことない感じのやつやってみようか!」

ジャローダが覚えている技は、つるぎのまい、ギガドレイン、ドラゴンテール、そしてさっきのリーフストーム。そしてジュゴンがアクアリング、なみのり、アイアンテール、ふぶき。そうだなあ‥つるぎのまいで攻撃力を上げて、その間にジュゴンのなみのり。そして強化されたドラゴンテールでなみのりを打ち付けて、綺麗に水飛沫があげることができればまたそこでふぶきをかける‥とか‥よさそうじゃない‥?‥うん、使えそう使えそう!パズルのピースを当てはめるみたいに一個ずつイメージを立てて頷くと、私の反応に2匹の顔が楽しそうに崩れた。よし!まさにその瞬間である。

「やあ!こんな所で練習していたのかい!?」

ヒェッ。懐かしさと嫌な予感で変な声が漏れ出て、周りを思わず見渡した。‥い、いない‥空耳か‥‥私おかしくなってしまったのでは‥????ほっとしてジャローダの目をみると、‥ん?何か、ジャローダの瞳に空飛ぶポケモンと‥‥ぶらさがっている人形が‥いや人間か‥

「探したよナマエ!」

なんでよびすてだよ !ペリッパーの足に捕まってここに降りようとしているのは、なんだか見覚えのあるブルーの髪。ペリッパーの顔、すごく大変そう。そりゃあここはカロスですからね、ご主人はさぞ酷なことを命令していると思うよ。体重半分くらい違うでしょ。勘弁してあげて。

「メールしたのに返ってこないからここまで来たんだ!元気かい!?」

仕事は?私の最初の疑問である。ホウエンのコンテストマスター、さぞお暇なことですね。どこぞのアーティストきどりか謎のコスチュームに身を固め、ゼェハァなペリッパーを残して颯爽と私の元へ駆けてくるその人物、まあ、ミクリさんの姿に、私は呆然とするしかなかった。

「メールは見たかな?」
「見てないです。ペリッパーが息絶えそうですけど大丈夫ですか?私には大丈夫に見えませんが」
「そうか!練習に夢中だったということだね!」

人の話聞けよ。しかもポジティブすぎる。引き攣り笑いを零しながら両隣の相棒達を撫でると、かたや困惑、かたや威嚇である。根に持つタイプのジャローダは前回の大会にミクリさんのミロカロスに負けてしまったから、恐らくそれが原因だ。

「‥メールは見てないですけどどうかしましたか?」
「ああ!君とバトルしたくてここまできたんだ!」
「‥」
「フフ、またすぐカロスに来ると言っただろう?」

ダメだやっぱ私この人苦手だ。悪意のないストーカーだ。バトルがしたいが為にこんなとこまでペリッパーを使うとは‥鬼なのか。せめてピジョットとかもうちょっと大型のポケモンを選択するとか、なんかなかったの?

「ペリッパー、大丈夫ー?」
「ペリッ」

少し後ろで息を整えているペリッパーに声をかけると、バサッと羽を広げて大丈夫だということを知らせてくれる。そしてペタペタとミクリさんの近くに寄ると、ペッペッ!なんて言いながら頭をぐりぐり押し付けているではないか。なんだと。あんな仕打ち(人間ぶら下げ空を飛ぶ)をされて懐いているだと‥

「はは、お疲れ様ペリッパー。ありがとう、おかげで客人と会うことができたよ」

成る程やはりポケモン達との強い絆はあるらしい。いやそれはもちろん、この間のバトルで分かりきっていたことではあるけど。よくよく見れば、素晴らしい羽のツヤと立派な毛並み。目は輝いている。この間のバトルでペリッパーは拝見していないけど、この人はやはり凄い人なのだと改めて思った。

「それで、バトルの申し出受けてくれるよね?」
「一択!?いやいや今はそんな気分じゃないんですよ。見ての通りジャローダとジュゴンとパフォーマンスの流れを考えているんです」
「じゃあ1対1ならどうだい?」
「耳ありますよね?」

食い下がらないミクリさんに溜息が止まらない。バトルなら他を当たってほしいなあ、っていうかこの間(コンテスト)バトルしたんだし、きっと他のトレーナーがいいよ。キョロキョロ周りを見渡してみると、近くにエアームドとトレーナーが一人。しかもあのエアームド、凄く綺麗で強そうな雰囲気を醸し出している。ヨッシャア!とガッツポーズがキマッた。

「ミクリさん、私よりも素晴らしいトレーナーが見えます!」
「違うんだよ。私はナマエと‥‥って、なんで君がここにいるんだ?」
「それはルネジムのトレーナー達に聞けばいいじゃないか。なんで僕がこんな所まで君を探しに来ないといけないんだ‥勘弁してくれよ」

知り合いかよ。早く連れ帰ってください!なんて心の声が漏れそうになった瞬間。よくよく見ると、胸のポケットにはメガストーンのようなピンがついていた。

2016.04.29