青い神

「やられるがままだな。特殊な一族の名を背負っておいて‥マジでお前どんだけ弱ぇんだよ」
「ぐっ…!」

叩きつけられた体を起こすとすぐさま腹部に鈍い痛みが走った。皆そうやって私のこと弱い弱いって。なんで、なんで…誰も認めてくれない。お兄ちゃんと名乗る目の前の人物ですらも私を認めてくれない…

「へぇ、なんにもできねぇチビがいるな。お前、本当に忍か?」
「お前すげぇ弱いんじゃねえか。そこの金髪とか、あっちの銀髪とか白魚上忍とかより格段に。なんで俺の護衛なんてしてるんだよ」
「スゴイどころじゃねェよ。テメェとは雲泥の差、月とスッポン、尺度が違ェっつーか格が違ェっつーか…」


中忍になったのに私は伸びる気配もないし成果もない。シカマルに今まで散々励まされて頑張ってきたけど…

3代目火影様。私は貴方の言葉を守ることができないかもしれません。忍には向いてないと、自分だけじゃなく他人からも言われ続けています。一族で私の兄と名乗る目の前の人物にも…

考えれば考えるだけ心が底に落ちていく。腹部を思い切り殴られたことによって意識が遠退いていくと同時に、目の前で兄と名乗る男の目が大きく見開かれていくのが見える。何にそんなに驚いているのかは分からないが、意識が途切れる間際とてつもなく禍々しい"力"と恐ろしい何かの姿が脳裏に映り込み、錯覚が起こったように闇の中へと投げ込まれていた。








【…随分と時間がかかったものだ】
…怖ッ!!ドラゴンッ?!‥ここどこ!?
【失礼な奴だ…だが、やっと力の解放ができそうだな。それもお前の"怒り"がきっかけに過ぎんが‥名を名乗れ。封印の器】
‥あ、もしかして……青龍、さん…?
【…貴様人の話を聞いているのか?】
あ、ああ!ごごめんなさい!!ひ、日暮硯コトメですうう!!
【日暮硯コトメか】
あ、あの…ここどこですか…?
【ここはお前の意識の中、我が封印されている精神世界とでも言ったら分かるか?…まあ詳しい話はいい。ところでコトメ、疾玖に会ったな?奴のチャクラをお前から感じるぞ】
疾玖??誰ですかそれ。








「……チッ…これが"青龍"のチャクラか。確かにかなり扱い辛い神獣だな…」

気を失ったコトメの右腕にはめられているグローブから漏れ出す大量のチャクラと、神獣が器を守る為にかけた結界を見ながら、兄と名乗る男は眉間に皺を寄せる。そして同時に窓の向こう側にある木の上にいたはずの人物が一瞬で男の横に立っていた。男と同じ姿をしていたその人物はいつのまにか変化の術を解いていて、綺麗な黒の長い髪をさらさらと揺らしているその女は顔色も変えずに口を開く。

「何故こんなことになっているんですか?"呪印"をつけろと言われているのに神獣の結界が張られているではないですか」
「俺のせいかよ」
「じゃなかったら誰のせいだと?」
「…」
「…今日はもう諦めましょう。貴方のせいで先程頭のキレそうな忍と接触してしまいましたし、この状態で呪印はつけられませんから」
「無理矢理にでもつけりゃあ「疾玖」…わかったよ」

睨みをきかせた女の顔に引きつった口元から言葉を絞りだし、コトメの体を放ったまま空間術の結界を解くと、その場から痕跡を消すように姿を消した。

2014.05.07

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