不審な空の色

「このやろー!!!」

シカマルから逃げ中忍待機室に戻ってきた私は誰もいないのを確認するとお腹の底から声を張り上げた。あーもう、私はなんて優男を好きになったんだよ。もちろんいい意味でね!それがツライってこと分かんないかなあ…そりゃあ幼馴染だし?昔から仲良くはしてたし?仲間として守りたいとか言うのは分からんでもないけどさ…恋心持ってる側からしたら刃物で心臓串刺しにされるくらい痛いっつーの!…っていうか完全にありえないタイミングでカミングアウトしちゃったんだけど…これからどうすればいいの…?呆然と椅子に腰かけでろんと机に突っ伏すと、シカマルの顔を思い浮かべた頭を掻きむしった。

それよりさっきの話しだ。私が青龍という神獣の封印の器であるという話し。故郷が光の国という場所であること、それに封印の器が"男"では無理だということ、ついでに私にはお兄ちゃんという存在があったこと。

「……お兄ちゃんか…」

ぼそりと口に出して空気を吐き出すとどんな人だったのかを想像した。私と同じ空色の髪の毛なんだろうか。お母さんのシキミさんはロンさんから聞いた話では空色の髪だったらしいけどなあ…お父さんはどうなんだろうか?そういえばお父さんの話しには触れたことなかったな…

ぼんやりとしつつ首を廊下側から窓側へとぐるりと向けると、その向こう側の木の上に人影が見えてつい目を凝らす。他の木よりも随分と大きい木にあるその人影は、どうやらこちらに目線を寄せている‥気がする。誰だろうか、机からのっそりと頭を上げて窓側へ歩みを進める。さすがに顔までは分からないが、忍の額当てのようなものが目に映りはたっと動きを止めた。あれは……木の葉のモノじゃない。じゃあ一体…

「まさか…抜忍…?」

しかし、木の葉の里には大きく結界が張られていて侵入者が入ればすぐに上の人達が気付くはずだ。だとしたら木の葉のお客様かな…?まあいいかと首を傾げ窓から視線を外すと、後ろに人の気配がした。待機命令でも出た忍かなと後ろを振り向いた瞬間、目にその人物の姿を映して私の動きは止まった。








「俺は忙しーんだよ」
「そんなこと言わずにさ、頼むってばよ!」

火影邸を出てすぐコトメがいるかもしれない中忍待機室に向かおうとした直後だ。俺の目の前に仁王立ちで現れたソイツは、数枚の紙片手に俺の肩を掴んでいた。

「手伝ってやりたいのは山々だがよ、俺だって暇じゃねーことくらいわかってんだろ。ナルト」
「サクラちゃんは今医療研修のアシットとかでいねーしサイも他の任務出てるしよー。仲間がいないんだってばよ」
「アシットじゃなくてアシストな。アシスタント」
「そう、それ!」
「はァ…大体アカデミーの資料作成とか今のナルトにゃ荷が重すぎだろ…」
「だからシカマルにお願いしてんじゃねーか!」
「それ俺じゃなくてもカカシ先生とかでもいいんじゃねーの?つーか俺より適任だろ」
「カカシ先生探しても全然見つかんねーんだってばよ。そしたらシカマル見つけてさ。お前ならいけるだろー?」

二ヒヒと笑いながら「俺ってラッキー!」みたいな顔をするナルトに口を引きつらせた。何故ナルトがアカデミーの資料作成なんて頼まれるのか…それは次期火影であるこいつにいろんな仕事のいろはを叩き込む為に、まずは分かりやすい初歩的な所から教えてやろう、という5代目の思惑らしい。しかし言わせてもらうがナルトがアカデミーの生徒の為に分かりやすい資料なんて作れると思うか?ナルトが作れるのはカップラーメンくらいだろ…ついでに言うと俺は次期火影の尻拭い。恐らくこの世で1番めんどくせーことだ。

「めんどくせーことに付き合うのは勘弁だぜ…っつーわけで俺これから用事あるから」
「ええーーっ!!!」
「うるせーって……?」

目の端に空色の何かが映る。ナルトがぎゃいぎゃい騒いでいるのをシカトして遠くの大きな木に佇む人物に目を凝らした。

コトメと…同じ色の髪。

何故だかどうしようもない変な焦燥感にかられて思わずそこから駆け出すと、ナルトの制止もそっちの気で大きな木の場所へ向かっていった。

2014.05.03

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