近過ぎたからこその、

嫌に真面目な顔をして紡ぐシカマルの言葉にムッとしてしまう。そういうのが私を勘違いさせるんでしょ?分かってるの?IQ200を越える超天才の癖にそんな超簡単なことが分かんないの?!ムカムカとしてくる心情と呼応するかのようにズキズキと痛みだす右腕。なんなのよもう…いろんなことが急にのしかかってきて頭が痛い。

「お前は俺の大事な幼馴染で仲間だ。危険が潜んでるかもしれねーって聞かされてめんどくさがってる場合じゃねーことくらい俺にだって分かる」
「………違うよ…」
「何が違ぇんだよ」
「そうじゃないんだってば……私…私、シカマルが好きなのに…そんなこと言われて嬉しいなんて思うわけないじゃん…!」
「!」
「シカマルはいっつも私に優しいから、いつかは私の気持ちも届くんだって思ってた…!けど、シカマルは、ハヤさんのことを…」
「…!…な、に」
「っ、ハヤさんが好きなら変な期待させないでよ…私、惨めすぎるじゃない…!!」

子供染みてるなんて分かってる。勝手に勘違いを膨らませたのは私だし、シカマルが優しいのだって私に限ったことじゃないのかもしれない。それでも私は心に渦巻くモヤモヤした物を吐き出さずにはいられなかった。シカマルの顔は驚きに歪んでいて、それを見た瞬間私は腕を振りほどきその場から消えた。








「全く…火影室の前で痴話喧嘩するんじゃない。全て丸聞こえだぞ」

コトメが消え去ってから数秒程呆然としていた俺は、躊躇なく開け放たれたドアの向こうにいた人物によって我に返った。にたにたすんじゃねーよ、どんだけめんどくせー顔してやがる…それよりコトメになんで俺の気持ちが見透かされてんだ。

「私は……ネジのことを特別な男性だとお慕いしております」

あの時ハヤさんが俺にそう言おうとした直前、ほんの少しだけ乱れたチャクラの気配がしたのを思い出して納得がいった。あれ、コトメだったのか…つーか、まだ演習場にいたのかよ。あのバカ。

「お前等も恋の1つや2つはしていたんだな。大人になったもんだよ」
「…どこに感心してんスか…」
「それよりお前も自分のことには鈍い奴だな…高嶺の花を見てばかりじゃ足元の蕾が枯れるぞ」
「…?」
「面倒くさがりってのはどいつもこいつも相手をちゃんと見てやらないもんなのかねぇ…その点においてはマトイの方が素直だったな」
「なんでマトイが出てくるんスか」
「さあな」
「…」
「なんにしてもアイツのことは頼んだぞ」

そのまま面白おかしそうに火影室に戻っていく5代目を見ながら俺は深く溜息を吐いた。ハヤさんにしても5代目にしても同じような発言しやがって…なんでそんなにまるで俺がコトメのこと好きみたいなこと言うんだよ。意味わかんねーめんどくせー…大体マトイと俺を一緒にすんなっつーの。確かにアイツは俺みたいにめんどくせーが口癖で変わった奴だが俺はそこまでめんどくさがりじゃねーし、つかアイツが素直とかありえねー。それに相手をちゃんと見てやらねえっつーか、 恋愛対象にならなかっただけだろ。マトイも…いやアイツは自ら望んで砂隠れに行ったんだよな?あーくっそ考えんのもめんどくせー!

「ハヤさんが好きなら変な期待させないでよ…私、惨めすぎるじゃない…!!」


んなこと言われても…じゃあ俺はどうしたらいーんだよ…なんと言われても守りたいモンは守りてぇだけだっつーのに…。火影室の前で立ち尽くしながらガシガシと頭を掻くと、渋々護衛という特殊任務に当たる為にコトメのチャクラを探しに歩き出した。

2014.04.30

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