守られるだけの忍

「はぁ、はッ……!」
「…やれば出来るじゃないですか。殺られるかと思いましたけど」

周りに広がる倒れた忍達。それをカカシさんやナルトが紐で締め上げていくのを見ながら私は荒い息を整えていた。隣にいる兎の面をした暗部が呆れたような目線を向けているのが嫌でも分かる。ぐっと唇を噛んでいると王子様の側に居たハヤさんが鋭い視線を向けた。

「つけられているとは思っていましたが…まさか暗部だったとは思いませんでした。これはただの護衛任務でしょう?」
「答える義務はありません。理由を知りたければ里に戻って5代目から直接伺ってください。では私はこれで」

シュン、と一瞬で消えた暗部の姿に目を丸くしていると、口寄せで忍犬達を呼び出したカカシさんは抜忍達を預けて何事もなかったように風の国へと歩き出した。ハヤさんは何かを疑っているのか、ナルトに王子様を任せカカシさんを追いかけていった。

「コトメ、大丈夫か?」
「あ、うん…暗部の人も助けてくれたし…」
「そっか、よかったってばよ…それにしてもあの兎面のアイツ、この間の…」
「ナルト、知ってるの?」
「おっかねー暗部だってばよ。突然火影室でクナイ向けられて、俺ってばチョー吃驚したんだ!!」
「へー…でもあの人、本当に強かった。動きが全然見えなかったよ…」

速すぎる動きに敵も翻弄されていた。おまけに手を下してもいないのにドサドサと倒れていく抜忍。一応私だって懸命に戦ったといえど相手にしたのはせいぜい2人止まり。何が起こったのかなんて全然わからなかったけどたった2人を必死に相手にした私はすでに息が上がってた。実力の差なんて比べられるものではない。それに私が戦っていた二人に手を出そうと思えば簡単に出来たのに、それをしなかった。‥それには何か理由があるのかな…

「お前すげぇ弱いんじゃねえか。そこの金髪とかあっちの銀髪とか白魚上忍とかより格段に。なんで俺の護衛なんてしてるんだよ」

そんなこと分かってるってーの!ていうかそれ私が一番聞きたいし!っていうかハヤさんだけ白魚上忍なんて呼んでるし!パタパタと服に付いた砂埃を払っていると隣で呆れたように話す王子様にムカッとして拳を握るがごもっともすぎて反論もできなかった。そりゃあ私の一族はすごく有能な血継限界を持っているのに、私は今だにちゃんと使いこなすこともできず、忍術も幻術も他の同期よりも劣っていて体術なんか1番苦手だ。これでいいなんて思ってはいないけど事実今の私にはこれが限界なのだ。

「コトメは弱くねーよ」
「はあ?さっきの見てもか?」

自分の力の無さを改めて実感し落ち込んでいた中で突然発せられた言葉にえっ、と思って顔を上げると、ナルトがビシッと王子様の顔にも指を指しながら眉間に皺を寄せていた。

「突然戦いに巻き込まれて怖くねーやつなんていねえし目の前で倒れた奴見て慌てねぇやつだっていねーよ。ビビってたかもしんねーけど、コトメはちゃんと動いてた。それだけでも充分すごいことなんだ。忍の"し"の字も知らねえどこぞの国の王子様が適当なこと言うんじゃねーってばよ」
「なんだと!!」
「ちょ、ちょっと!」
「はいはいはーい、喧嘩しなーいの」

王子様が掴みかかろうとした所で前を歩いていたカカシさんが止めに入る。ほっとして息を吐くとなんだか納得したようなハヤさんの顔が目に映った。やっぱりただの護衛任務ってわけじゃなかったのかな。

目の前で犬猿感の増した2人を視界の端に入れながらなんとなく確信付いた私はごくりと喉をならし、忍が忍に守られるなんて情けないと眉を寄せて俯いた。

2014.03.09

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