まだ青い少女

よっし!ばっちり!!

鏡の前で試行錯誤すること20分。私の髪に昨日まで結ばれていた赤い紐は茜色のしっかりしたものへと変わっていた。シカマルからもらった中忍祝いのプレゼント。しかも私に似合うと思って買ってくれたなんてこの上ない幸せなんですよ。うわああ最強に乙女!

「ふふっ、なんか任務にも気合いが入るなぁ」

いつもの忍服に身を包み靴を履いて玄関を開ける。なんだか今日はいいことありそうだなぁと思っていた時、目の前に見知ったくノ一が横切った。

「いの!!」
「あっれ、コトメー?この時間から出るなんていつもより遅いわねー。とりあえずおはよ!」
「おはよーっ。へへ、うへへ」
「何いきなりキモい笑い方してんのよ……あれ?髪紐変えたの?似合うじゃない」
「え!ほんと!?へへ、これねぇ実は…」

目の前でうげっとなっている美人なくノ一、山中いのに私はニヤニヤしながら口を開く。昨日ヨシノさんから中忍祝いをしてもらっていたこと、シカマルが中忍祝いでわざわざこのプレゼントを買っていてくれたこと…へぇぇと大層驚いた顔をしながらいのがまじまじと髪紐を見つめていた。

「あのめんどくせーが代名詞のシカマルがねぇ…よかったじゃないコトメ!」
「ふふふふへっ」
「あんたのそのだらけた口元は任務に行く前にどうにかしなさいよ」
「わ、わかってるよ!」

溜息を履き呆れ顔で笑ういのに私は慌てて頷いた。というのも、私は数年前からシカマルのことが大好きなのだ。木の葉に来て初めて出会った時は4歳、5歳でめんどくせーめんどくせーと耳にタコができる程聞かされ、子供ながらにこの子の未来が心配だ、むしろこの男のお嫁さんが心配だと思っていたのに今では自分からお嫁さんに立候補しているようなものなんだから。ほんとに人生よく分からないもんだ。

「あ、いのは今日任務?」
「んーん、私今日から医療研修なんだよね。当分家に帰ってこれなさそう…暇なら病院に遊びにきてよコトメ」
「ええ、病院って遊びに来る所じゃないよ?でもそっかぁ…週1の甘栗甘会いけなくなるねぇ…残念」
「そうなのよー!でもまぁ1人前になる為には頑張らないとねー。デコりんに置いてかれるわけにはいかないし」
「サクラすごいもんね!私達と同じ歳で医療忍者の最前線チームに抜擢されてるんだもん!」
「だーかーらー!私も頑張るの!」

ぐにーんと私のほっぺたを抓りながら目を三角にするいのは、悔しそうな反面すごく嬉しそうだ。確かに親友がここまでやってるんだからいい刺激だろうなぁ…私がいのと出会ったのはサクラよりも後だから少し羨ましい。

「じゃあ私先に行くわね、遅れたら大変だから!」
「うん!いの、頑張ってねー!!」

ばたばたと去って行ったいのを見ながら私も急いで上忍待機所近くの任務受付所へと走る。今回何かしら任務に組み込まれていることは知っていたが集合場所やメンバー、任務内容はまだ知らなかった。まあ上忍であれば火影様から直接聞かされたりすることも多いしもちろん小隊長を任せられる中忍であればそういうこともあるみたいだが(シカマルみたいなのは特に)、私は悲しいかな、まだまだ青臭いなりたて中忍なのでそんなに難しい任務や危険な任務はしたことがない。

「イールカせーんせ!」
「おはようコトメ。今日も元気だなぁ」
「今日の私の任務ってなんですかー?あと、集合場所も教えてください!」
「ああ。えーっと…風の国までの護衛任務で、待ち合わせ場所は火影邸の前だな。よっぽど大丈夫だとは思うが油断はするなよ」
「はーい」

ぴしっと手を挙げるとぱたぱたと受付所を後にした。護衛任務かぁ。あれ、私里の外に出る任務初めてだ!変な高揚感とわくわくを引っさげて私は火影邸を目指した。








「…え」
「遅いねーお前。遅刻はダメだぞー」
「それはカカシ先生が言っていいセリフじゃないってばよ」
「全くもって同感します…」

何このメンツ!!火影邸に着いた先にいる有名どころな三人の忍の姿に私の足が竦んだ。今日ってそんな大変な護衛なの?!イルカ先生よっぽど大丈夫って言ってたけど!!?

右からコピー忍者のはたけカカシさん、中央に同期であり木の葉の英雄うずまきナルト、左には五月雨(さみだれ)という異名のついた白魚ハヤさん。上忍2人+英雄ってもう私気が気じゃない。3人を前に私の頭は真っ白だ。

「え、なんで急にやる気なくしてんのこの子…」
「おおーいコトメ、大丈夫かってばよー」
「綱手さんも何を考えてこのメンバーを組んだのか…私も疑問ですが、とにかく任務に出発しましょう?コトメさん」
「ハヤさん…」

ああ、いつ見てもお美しい……けどその綺麗な顔で毒吐かないでほしい…。ふわり、にっこり微笑みながら私に手を差し伸べてくれる白魚ハヤさんは実力もさながら里でも1番人気…もはや里を越えて他里でも人気の高いくノ一だ。そりゃこんな美人だものね。ええ、ええ、羨ましい…しかも私の1個上だというじゃないか。神様ってヒドイ…

「今日の任務って…護衛なんですよね…?」
「ん?まぁーね。でもいいとこの王子様だから、俺等がついてるって感じ?」
「私がいる意味って一体…」
「コトメさんはまだ里外任務は出たことがないということらしいので、戦争も落ち着いた今がいい機会だということではないでしょうか?」
「え、コトメお前まだ里外任務出たことねーの!?」
「こらこらナルト…まぁとにかく、もう里の門近くに王子様もいらっしゃってるみたいだから、行こうか」

のっそりとその場から歩き出したカカシさんに続いて2人も歩き出す。私は先程の奮起した思いも忘れ3人の堂々たる背中を見つめながら小さく溜息を吐いた。

2014.03.07

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