赤い糸なんて切ればいいじゃない

「馬鹿か!!傀儡使いもいるんだぞ!!」
「私の実力ではできないことだと言いたいんですか」
「そうじゃない!!お前既に重傷だろうが!!」

声を荒げるゲンマ先輩がだらりと垂れた私の腕を睨みつけた。正直、出血の量、馬鹿になってないと思う。けどそんなのは増血剤があればなんとかなるだろうと、右手でポーチを探った。さっきからゲンマ先輩が耳元で五月蝿い。それを静かに見物していた男は深く溜息を吐いて、忍服から伸びた手が私とゲンマ先輩へ向けられた。

「んだよ勝手に揉めてんなよめんどくっせーな…ツゲ、さっさと殺っちまおうぜ」
「命令しないでよ!ザザの癖に!!!」

キイッと物凄い顔を男・ザザに向けた後、ツゲの両手にある10本の指が複雑に動く。今々崩れた傀儡の山が形を成して行くと思ったら、そのまま地面へと潜っていった。

「チャクラ糸の動きで大体どこにいるのかは予想できます。ゲンマ先輩、私から離れてください。2人一緒にいると標的になります」
「そんなの分かってる。…ウミ、お前、」
「トモリです」
「分かった、トモリお前応援呼んでこい」
「馬鹿じゃないですか。行くならゲンマ先輩が、!」
「気を反らすなんてよっぽど余裕みたいねえ!」

瞬間、地面から金色の槍が足下から突き出した。まるで避ける所が分かっているかのように次々と地面から伸びる。ゲンマ先輩と分かれて避けても意味は為さないらしい。にしてもどういうことなのかと、私は意思を持って動いてくれない左肩を押さえながら、自分の前とゲンマ先輩の方角から地面を突き破ってくる金色の槍と傀儡を操っているツゲへ交互に視線をやった。

指は…10本しかないのにどうして10体以上の傀儡を操れる…私とゲンマ先輩が分かれた後も同時に計22本の槍が地面から突き出ていた。どうやって動かしてるの……とにかく、あの気持ちの悪い男に攻撃をしかけてみないとどうなってるかが理解できない。…全く……"囮"、か……?…そういえば、ご意見番はなんで………

「囮が必要だって……分かってた……?」

避けるだけならわけないと、頭は全く別のことを考えていた。

「…というより、誰なのかという断定ができんのじゃよ。情報部で手を尽くしてみても情報が一切出て来ておらん。つまり、なんの為に、何が目的なのかがわからんのじゃ」
「相手の能力を考えると、この任務は犠牲という名の囮が必要になる」

よく考えれば…なんだか言ってることがちぐはぐだらけだ。

「公にはなってはおらぬが、最近の抜忍や里に侵入しようとしていた奴等は皆"本当の顔"がない」

「……本当に、こいつらは抜忍……?」
「馬鹿!何ボーッとしてる!!ウミ!!!」
「だから名前は、!」

ドシュッ……っと、鈍い音が耳を裂いた。








「……アイツ、気でも迷ったのか…?」
「分かりません…どうしたんでしょうかカカシ先生…」

いつものように、道を歩いているだけだった。ただ違うのは、隣に俺の思い人がいるようになっただけだ。いつからだったかは忘れた。でも、好きなんだ。とても。分からないけど。分からない、けど。

「ねえカカシ、周りすごい見てくるよ」
「しょーがないんじゃない?手、繋いでるんだしさ」
「…ふふ、へへ!」
「何、どうしたのユニ」
「なんでもなーい!」

俺はずっとユニが好きだった。念願叶った。嬉しい。嬉しい。うれしい。ウレシイ。そうだよ、嬉しいじゃないか。笑ってユニの頭を撫でると、ユニも笑った。そう、ウレシイ、ウレシイ。何かに取り憑かれてるみたいに。そう思った。

「カカシ先生はウミさんが好きだったんじゃなかったんですか…?」
「……」

2015.10.15

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