もう、離れないでね?

「……お前」

シカマルに後を任せて、あうんの門をくぐり抜ける所だった。焦っている俺の目の前に立ちふさがるように立つ人物がいる。忘れていた訳ではない。ただ、最優先はウミが先だと、俺の中の何かが告げていたのだ。

「…どこに行くの?カカシ」

呆れたような目で薄ら笑うのは、昨日「3日待つ」と俺に告げて消えたユニだった。俺が何を考えているか分かっているのか、溜息を1つ吐いて俺の目の前に歩み寄ってきた。

「何してんの」
「それはこっちの台詞よ。里外任務なんて言われてないはずでしょ」
「まあね。でも、俺がどこで何しようとお前には関係ないと思うんだけど」
「残念だけど、カカシを今里の外には出せない」
「何?火影様にでも言われてきたの?」
「違う。"こちら側"の意思だよ」
「…夕虹一族、"純血"から枝分かれした一族の1つ」
「!」
「当たってたか?‥さすがシカマルだな」
「奈良家の策士……ああ、そういえば日暮硯一族の子と仲良かったっけ…」
「悪いけど、俺の邪魔するならここが木の葉内部だろうと容赦しないよ」
「まだ私への返事もしてないのに他の女の所に行くなんて酷いんじゃない?」
「あと2日待ってくれるんでしょ」
「…、"待って"、よ…」

その言葉にぐ、と唇を噛んだユニを見て素早く印を組んだ。大体今回のウミの任務は暗部での任務だと聞いていたのになんで相手がゲンマのツーマンセルなんだ。そこからおかしいでしょ。影分身の情報が少し腹の立つものだったことに頭をイラッとさせていると、印を結んでいたはずの手が寸での所で止まっていた。

「…、な、んだ…?」
「なんだ、じゃないよ。言ったじゃん、"待って"って」
「何をした、ユニ…」
「え?何もしてないよ?…だって、私の"待って"の言葉に、カカシは今待ってくれてるだけでしょう?」

手が、動かない…!!ひやりとした汗が背中を伝う。どうして動かない。筋がピクピクと動いているのは分かるのに、手が先に進もうとしない。ユニの得意技は、呪いの札を用いた呪術の類。特殊なチャクラを練り合わせた札だと聞いている。嫌な予感が過る。ユニの顔が酷く歪んでいた。今俺は、言葉で止められたということか…?もし今までの呪術が"言葉を蓄えられる"代物だったとしたら…

「ーー…やっぱり、後2日も待てないや。ねえカカシ……" 私を 好きになって "」








「大丈夫か!!?」
「っ…は、い」

翌日夕方過ぎのことだった。相変わらず速いペースで山岳地帯へと入ると、お待ちしていたとでも言いたかったのか数10人の抜け忍の部下を従えた男二人が上から私達を見下ろしていた。顔はビンゴブックと同じだった。敵が待ち伏せていたみたいだが、こんなに早く会えるとは好都合だと思った瞬間にゲンマ先輩の背後から巨大な金色の槍が見えて、ゲンマ先輩を左に押し出した瞬間私は金色の槍に左肩を貫かれていた。ズボッと嫌な音を立てて血が噴き出す。繋がってはいる、けど、左腕はもう動きそうになかった。

「いつの間に背後にいやがったんだ…!?」
「……恐らくあの男達の周りにいるのは傀儡、地面に潜り込んでいるのがあいつらの部下…」
「傀儡…?」
「正解でーす!」
「「は」」
「やめろってツゲ…お前男だろ…」
「体はね!!ほんとは体も女がよかったんだから!大体なんでアンタの方が華奢で女っぽいのか聞きたいわよ」
「知らん」

ガタイがいい男・ツゲと呼ばれた男が高い声で突然くねくねしていてすごく引いた。その片割れの男は、呆れながら縦に長い手裏剣を地面に突き刺す。ガシャンという音が威力を示している気がした。

「‥にしてもこいつらが傀儡だってよく気付いたな」
「隠したいんだったらその変態の手から見えてる1本のチャクラ糸切ったほうがいいんじゃないですかね」
「お前な!!!」
「私は変態じゃないわよ!!!」

ぶちぶちぶち。あろうことか怒りのままに全てのチャクラ糸を切り離したツゲは、相方の怒りを無視して私を指差している。ガラガラと崩れていく傀儡に、ハッタリも甚だしいと心底思う。右肩を支えるゲンマ先輩に、私は小さく口を開いた。

「…とどめはゲンマ先輩が。私が最初に"全員"引きつけます」

2015.08.27

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