続・光の国の一族達

「久しぶりじゃな」
「…」
「年寄りを相手にそんなに睨むでない」
「そんなつもりはありませんが」
「数年ぶりの再会だというのに変わらんなお前は…」
「ご用件なら手身近にお願いします」
「トモリ落ち着けって」

ゲンマ先輩に無理矢理定食屋に付き合わされ、無理矢理ゲンマ先輩が頼んだ定食の半分を口に詰め込まれた私は、イライラを隠しきれないままご意見番の2人がいる部屋へと足を踏み入れた。そもそも私はご意見番の2人自体があまり好きではないからただ今余計にイライラしているわけで、睨みつけているのは(尚悪いというのも分かってはいるが)無意識だ。隣では「相変わらず不仲感スゲェな」とでも言いたそうなゲンマ先輩が溜息を零しているのが見えた。

「少しは丸くなったかと思ったが‥ウミ」
「今はトモリとしてここにいます。その名前を呼ぶのはやめてください」
「可愛げのないやつは好かれんぞ」
「好かれなくても結構です。問題ありません」
「トモリ」
「…」
「…まあいい。ゲンマ、こちらから呼んでおいて悪いがこの手紙を拷問部に持って行ってもらっていいいか?話はトモリにしておく」
「んあ?手紙くらいでしたら里を出る前に渡してきますけど」
「急ぎでな」
「はぁ…分かりました」

呼んだくせになんだよ、と顔に出ていながら大人しく手紙を受け取ったゲンマ先輩は、渋々印を結ぶと瞬身の術で消えていった。こうなるんだったら私だけ呼べばよかったのではとは思ったが、目の前のご意見番2人のことだ、私だけ呼んでも来ないかもしれないと踏んでのことだったんだろう。どこまで私を信じていないんだ。

「…今回の任務についてじゃが」
「はい」
「相手の顔をビンゴブックで確認したかもしれぬが、恐らくその顔とは違う」
「…違う、とは」
「公にはなってはおらぬが、最近の抜忍や里に侵入しようとしていた奴等は皆"本当の顔"がない」
「本当の顔…」
「…というより、誰なのかという断定ができんのじゃよ。情報部で手を尽くしてみても情報が一切出て来ておらん。つまり、なんの為に、何が目的なのかがわからんのじゃ」

情報がない。…じゃあ、前に拘束した抜忍ももしかしたら。以前、奈良シカマル隊長、深月セナさんとのスリーマンセルで任務に出たことを思い出した。もしかしたらあの時に拘束した2人組も同じく、なのかもしれない。そういえば、あれからどうなったのかは知らなかった…というより、知る事はないと思ってたけど。そして、私には1つ気になっていたことがあった。何故、このくらいの話でご意見番にわざわざ呼ばれたのか、ということだ。

「…少しいいでしょうか」
「なんじゃ」
「何故ご意見番からそのようなお話をされるのですか。5代目からの通達、もしくは文章でもよかったのでは」
「2人の暗殺任務はわしらからの極秘依頼じゃからな。綱手は今回のこの任務に人員は出せないと了承せんかった」
「了承、してないとは」
「相手の能力を考えると、この任務は犠牲という名の囮が必要になる」
「!」 
「分かっておるな、トモリ」

ご意見番のホムラ様の目が私の目を捕らえる。言いたい事はよく分かった。2人は、私に「死ね」と言っているのだ。それにしてもまた急な発言だなと思いつつ、すんなりと冷静になることができていた。2人は、私が木の葉に来た頃からすでに存在自体を快く思っていなかった。その理由が"封印の器"絡みなのはなんとなく感じていたし、自分でどうにかできるわけがないのもよく分かっていた。こと暗部なんて死が付きまとうのは至って普通であり、わざわざ言わなくてもいいんじゃないか。バレないように溜息を吐き出すと、拳をきゅっと握りしめた。

元々は既に死んでいる筈だった身、今更なんだろうと受け入れられないことはない。けど、この二人の言葉で死んでしまうのは少々癪かな………だけど、丁度良いのかもしれない。死ぬなら、忍として。

「…分かっています。私がどうなろうと、任務は必ず遂行させます」
「………………がな…」
「なんでしょうか」
「気にするでない。ゲンマには今回の暗殺任務が極秘だということだけ伝えておくように」

小さくぼそぼそと独り言のように呟いたもう1人のご意見番、うたたねコハルに眉間の皺を寄せながらも「分かりました」と頷くと、この空間にいることに耐えられなくなった私は印を結んでその場を後にした。

「…神獣達が一族を選んだとはいえ…”封印の器”の状態ではいずれ"アレ"が復活するかもしれん。早くどうにかせねば」
「もしもの時の為に暗部はついていかせている。器をなくした神獣は力が制御できず、暴走してしまうと聞いておるからの」
「"アレ"はどうするのじゃ」
「…綱手が目を光らせておるからな…」

2015.03.25

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