独占欲の強いオンナ

あの女の子一体誰なんだろう…カカシ先輩の部屋に割と勝手な出入りをしてたような雰囲気だったけど。

「よぉ」

謎の女の子とカカシ先輩を置いて家を後にした私は、上忍待機室につきぼんやりと空を眺め朝の出来事を考えていたが、後ろから声をかけられた瞬間その思考を中断させ、緩く振り向いた。

「ゲンマ先輩でしたか…」

ちらりと目線をゲンマ先輩へ向け瞬きを1つするとおはようございます、と頭を小さく下げ、また空へと視線を投げた。申し訳ないけど相手をする気分じゃない、なんて思いながら溜息を吐くと、それが気に入らなかったのかゲンマ先輩の片手が頭の上にのしかかってきた。

「何だよ、人の顔見て溜息吐くんじゃねぇ」
「あ…そういうつもりではなかったのですが…なんかすみません…ちょっと、髪の毛ぐしゃぐしゃにしないでください」

わしゃわしゃと頭を撫で回すゲンマ先輩の手を掴むと見上げるように視線を上げる。そういえば前にお見舞い来てくれたんだっけ…ふとそれを思い出すとゲンマ先輩にくるりと向き直った。

「この間はすみませんでした」
「は?何が?」
「わざわざお見舞いに来ていただいたので申し訳なかったな、と」
「…お前ほんっとになんも変わってねーよな。そこは普通"ありがとうございます"ってお礼を言うとこだろ」
「あ………すみません…」
「この間も思ったんだけどよ…その謝る癖早く直せ。なんか俺が怒ってるみたいだろ」
「そんなつもりじゃ、」
「あ…悪ィ、責めてる訳じゃないから…それよりさっき随分ぼんやりしてたみてぇだけどまだどっか体調悪いのか?」

罰が悪そうにもう片方の手で頭を掻きながら視線をそっぽへと向けるゲンマ先輩に首を傾げる。体調が悪いように見えるんだろうか。空を見てただけで、この通り私はぴんぴんしてるんだけど……

「…まあなんもねぇならいいけどよ。一応病み上がりなんだからあんまり無理すんじゃねぇぞ」
「病み上がりっていうんですかね」
「似たようなモンだろ。それより今日夜時間あるか?退院祝いに飲みにでも連れてってやるよ」

ぽん、と頭の上から肩に手を置くゲンマ先輩の顔付きに笑みが浮かぶ。しかし、飲みに行ってしまうと今日の夜御飯が作れなくなる。ということは、必然的にカカシ先輩はまた自分でご飯を作って一人で食べないといけないわけで…

「あ…ご飯作らないとカカシ先輩が…」
「別に1日くらい大丈夫だって。大体俺にだってチャンスくれてもいいんじゃねーの?」
「なんのチャンスですか」
「…まあとにかく、いいだろ?」
「でも…」

やっぱり私はやめておきますと言おうとした瞬間、扉の向こうから賑やかな声が聞こえてきたことに気付き、それが今朝聞いたばかりの声だったことに一早く反応するとすぐさま扉に背を向ける。その賑やかな声にゲンマ先輩が小さく「うるせぇな」とぼやいたと同時に扉が開く音がした。

「もう!私がいない間に浮気するなんて!」
「その台詞物凄くおかしいって分かってる?もーいい加減離せって……」
「…」
「なんだ、お前戻ってきてたのかユニ」
「あれ、ゲンマ…って!あー!!朝の!!」

私を思いっきり指差しながらいかにも怒ってるような顔を向ける、ユニと呼ばれた女の子へ私も溜息を吐きながら後ろ手にちらりと視線を向けた。ぷくーっと頬を膨らませているその姿は、今朝見た嫌な笑みが嘘じゃないかとも思わさせられる。が、事実だ。私この人絶対苦手なタイプだ、と感じずにはいられない。

「えっと?カカシに聞いたけどウミちゃんって言うんだっけ?だめだよ人の彼氏に手を出しちゃ!」
「ユニお前ウミより年下でしょ。というかいつから俺お前の彼氏になったのよ。違うでしょーよ。ウミに変なこと吹き込むのやめてちょうだい」
「私の彼氏は一生カカシだって決まってるの!いーい?金輪際カカシに付きまとうのやめてよね!居候なんて私が許さないんだから!早く他の家見つけてよ!」

彼氏、彼氏って。カカシ先輩へ視線を寄せると呆れた顔をして顔の前で手を横に降っていた。カカシ先輩の反応を見れば分かる。思いっきりユニ、ちゃん(と呼ぶべきなのか…?)の嘘だろう。とはいえ何故だかいい気はしない。というか凄く不快だ。でもどうしてこの空気、雰囲気が不快なのかはよく分からなかった。

「おいゲンマ、ウミちゃん、5代目が任務頼みたいから火影室にーー…ってユニ!お前報告書は!!」

ぎゃいぎゃい騒ぎ立てるユニちゃんの声を遮るべく両手で耳を塞ぐと、さらにもう1人上忍待機室へ入ってきた。イズモ先輩だった。そしてイズモ先輩の言いかけたことを理解すると、ゲンマ先輩の手首を掴んで逃げるように扉の向こうへと繰り出していた。

「あ、待っ…」
「報告書の出し忘れとかで5代目から怒りの飛び火くらうのは俺(とコテツ)なんだから早く出しにいけよ!」
「ちょっとほんとに離せユニ。俺も行かないと」
「イズモはゲンマとウミちゃんって言ってたのになんでカカシが関係あるの!」
「人の話し聞いてんのかお前!!」
「イズモは黙っててよ!」
「なんなのお前らすぐ側で騒ぐのほんと勘弁して」

2014.09.21

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