彼は、探る者

セナさん、サスケ君と何回会ってたんだろう…ううん、サスケ君は、なんでセナさんと会ってたのかな…

セナさんの荷物を取りに行ったはずなのに、思わず何も持たずに飛び出してしまった私はまた深月病院に戻る訳にもいかず、とりあえず自宅に帰ってセナさんが着れそうな服を大きめの鞄に詰めていた。下着はさすがに貸すわけにはいかないからどこかで下だけでも調達するとして…はあ…なんて時々深い溜息が漏れる。

「憂鬱すぎるわよ…しゃーんなろー……」

私はずっとサスケ君を見てきた。だからこそ、サスケ君がなんとなくセナさんに心を許してるような素振りがあるのもなんとなく分かってた。それがどういうことなのかはよく分からないけど…
セナさんは医療忍術も私なんかとは比べ物にならないくらい程の腕があるし、女性としても全然敵わない。それは、身を持って分かっているけど…

「…って、こんなこと考えてる場合じゃない!病院戻らない、と…」

ぎゅぎゅっと荷物を無理矢理詰めてすくっと立ち上がると、ふと窓際に気配を感じて振り向く。そこにはさっきまで深月病院にいたサスケ君が窓に背中を寄りかからせながら、こちらに視線を寄せていた。

「サスケ君…!どうして…」

自分の驚いた顔の向こう側には「いいから開けろ」とでも言いたそうなサスケ君の姿がある。まさかあの後追いかけてきてくれたのかな?なんて乙女的妄想が過ったけど、あのサスケ君のことだ。「お前落としていったぞ」とかで、医療道具だか手裏剣だかを手渡されるのが目に見える。セナさんのこともありつつで少し複雑に顔を歪めつつ窓を開けると、開けた瞬間サスケ君の手が伸びて私の腕を掴んでいた。

「…え?」
「何か勘違いしてるぞ」
「勘違いって…急にどうしたの、サスケ君」
「俺がセナとなんかあるって思ってんだろ」

「へっ…ほんとに追いかけてきてくれたの!?」
「はあ?…っば、俺はお前が勘違いしてるんだったら後々面倒くさいんじゃないかってな…!」

サスケ君の少し慌てた顔を見て、どこか急激に安心してしまった。むしろ、この慌て方は私にも可能性があるんじゃないかって。ああやばい顔が勝手に笑ってしまう…!!…って、そんな場合じゃなかった!

「ごめん、病院行かないといけなくて…」
「……セナに何があった」
「…ここで自分の体を傷付けてたみたいで…」
「…?」
「私もよくわからないけど…セナさんの口寄せの蝶々知ってるでしょ?その蝶々が…側で殺されてたの…」
「!」
「多分それで、キンさんを助けたくてセナさんは…」
「俺は今光の国を調べる為に単独任務についてる」
「光の国……確か、セナさんの…」
「知ってるのか」
「う、うん、少ししかしらないけど…綱手様が教えてくれたの。サクラはきっとセナと関わる事が多いだろうからって」
「…」
「光の国がどうしたの?」
「いや…今言ったことは誰にも言うなよ」
「え、っちょ!サスケ君!?」

何が言いたかったのか分からないままその場から一瞬で消えたサスケ君にぽかんと口が開く。あ、暗部の任務なんてそもそも極秘内容なんだから言う筈がないじゃない…って!早く戻らないとそろそろやばいって!

鞄を持ち上げると窓から飛び降りて急いで木の葉病院を目指す。サスケ君は"光の国出身"であるセナさんの何が気にかかっているのか。セナさんの容態が少しはよくなっているようにと考えている傍らで、サスケ君の真剣な顔が頭の隅でちらついていた。

2015.05.07

prev || list || next