夢と現実と心の狭間

なんでアイツばっかいっつもひいきされてんの?
むかつく
あれだろー?
すざくのふういんうけてるから大事にされてるって
いっつもしゅぎょーばっかしておれらのこと見下しててさ。お高くとまっててやなやつ!


「んん…」

午前6時。また変な時間に目が覚めてしまった。久しぶりに夢を見たと思ったら今度は昔の夢、とか‥。アカデミー時代のほとんどを、私は木の葉ではない光の国で過ごしていた。朱雀の器として光の国では有名だった私に向けられた同年代達の目は、随分と冷ややかであったことだけはしっかりと覚えている。いや、覚えられずにはいられないだろう。

「はぁ…」

ばさっと掛け布団を捲り上げ、寝ぼけ目を手で擦りながら隣に目を向けると、ベッドの上ですでに上体を起こしてこちらを見ていたカカシ先輩が…………ていうか何かが変だ。まだ私は寝ぼけているのだろうか。

「おはよ」
「……カカシ先輩、ですよね」
「え、それ以外に誰がいるのよ」

誰がいるのよって言われても。(恐らく)カカシ先輩の姿に、どうやら私の思考回路は一時停止しているらしい。

以前ナルト君に言った「カカシ先輩のマスクの下は見た覚えがない」というのは嘘である。何故嘘をついたかなんていうのは分かり切ってるだろう。知ってるだなんて言えば、彼は絶対に煩く騒ぐはずだからだ。しかし見たことがあるって言ったって所詮昔の話しであって。任務後、こっちに帰ってきてからはまだ一度も見ていなかった。別に昔からこんな顔だったとは思う(うろ覚え)。素顔を見てこんなに心臓を煩くしたことなんて、ないはずなのに…‥。私の目の前に映るのは端正に整った綺麗な顔と銀髪。何故か上半身裸のーー

「…わっ!」

なんだか無性に顔が熱くなってきて、枕にしているベージュ色のクッションをカカシ先輩の顔目掛けてぶん投げた。

「何で朝からそんな挨拶!?」
「風邪、ひきます、よ、」
「あ…昨日風呂入ってそのまま寝たから……あれ?なんか顔赤…って、ちょっとそんな格好でどこいくの!?」
「修行、してきます」
「いやいやお前今日から任務でしょ、待ちなさいって!」

なんだろうこれ、なんだろうこれ、…なんだろうこれ。

心臓が異常に煩くてカカシ先輩の顔が見れない。顔が熱い。朱雀のせい…じゃないし、だったらどうして…病気か、病気って、なんの…?本当に、病気?先輩の止める声も聞かずにガタン、ゴンッという音と共に部屋から出ると、まだ冷たい空気が肌を刺した。壁とかドアに頭ぶつけて痛いし寒いけど、熱い。なんだこれは…グレーのパーカーを握りしめたまま、つっかけ1つで立ち往生するわけにも行かず、私はとにかく何かをして気を紛らわせようと走り出した。

「…あ?お前何やっ…いや今真冬だけど頭大丈夫か?」
「……は、…ゲンマ先輩、」

すぐの角を曲がった先、寒そうにポケットに手を突っ込んだ人物と鉢合わせ足を止める。何帰りかは分からないが、ベストに防寒具を着てるあたり朝まで任務コースだったんだろう。この私の意味不明な行動をしかめっ面で見ていたゲンマ先輩は、防寒具を脱いで私にかけると有無を言わさず腕を掴んだ。

「ちょ、ゲンマ先輩…っ」
「風邪引いても知らねーぞ。分かったらとっとと俺ん家来い」
「あ、いえ、大丈夫ですっ…」
「何らしくもなく焦ってんだよ?」

千本をカチカチ鳴らしながらもずるずると引っ張られ、私はカカシ先輩の家から15分程離れたアパートへと強制連行されていた。








「どーしちゃったのあの子…」

あのウミが壁やドアに頭を打ち付けたりしながら顔を真っ赤にして、いかにも動揺してます!な雰囲気で玄関から出て行った。あんなこと今までだってなかったのに。大体、こんな寒い中なんで部屋着で出て行くかね?今日は火影邸前に十時集合、まだ6時過ぎだ。着るはずだろう服も置きっ放しだし、とりあえず探しに行くかと上着に手をかけた。おっと、その前にシャツを着ないと凍える。

まさか…上半身裸にびっくりしたとか…?いや、ないないないないありえない。だってウミは昔何度も見てるんだから(いやらしい意味ではなく)。それなのにというかそれでなくともドキドキしてくれないんだよ。…じゃあ、なんで‥。きっちり服を着込んだ俺は疑問を浮かべたまま、つっかけに足を通して外へと繰り出した。

2014.02.27

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