吉報!

「…やっぱりネジさんとハヤさんって付き合ってるのかな」
「え?付き合ってないのお?あのハヤちゃんの感じ見たら恋人同士だと思ったんだけどお」
「噂はあるけど実際分からないんですよね。ネジさんってモテるけど一度も告白受け入れたことないから」
「あの子の?」
「いえ、ハヤさんではないみたいですけど…」
「はっはぁ〜ん…?これはハヤちゃんが好きだから、周りからの告白を断ってハヤちゃんの告白を待ってるとセナは見た!」

ネジ君の病室から出て、サクラちゃんと廊下を歩きながら色恋話を咲かせる。いいねいいねえ、わくわくするよお!美男美女同士がカップルとかすごいよねえ。…ってやっぱり漫画か!恋をするのは素敵なことだよ、うんうん。1人にやにやしながら頷いていると、隣にいるサクラちゃんから「あ」と小さく声が上がった。

「え?何?まだ面白い話題があるのお?聞きたい〜!」
「あ…いえ、な、なんでもありません」

いや明らかにしまった!って顔してるし。駄目だぞお〜?忍が表情崩しちゃあ!にーっこり笑ってサクラちゃんの肩に横から腕を回すと、逃げられないように掴んだ。

「セナ先輩に隠し事は通用しませんよお〜?」
「いえ、本当に…もう仕事行かなきゃって…」
「目が泳いでるし、なんか汗ばんでるよお?嘘ついてますサインがどこからも見えるんだけどお〜」
「セナさんが仕事しなくなるから言うなって言われてるんです!!」
「……成る程成る程…テンゾウ、というかヤマト絡みということね!!言いなさい!!」
「ほらもー絶対こうなりますもん…!」

私のサボり癖の中に、仕事しなくなる=テンゾウに構いに行く、という方程式も出来上がっていることをよく分かっちゃった綱手様の言いそうなことだよねえ。思いっきりサクラちゃんの胸倉を掴みあげるとぐらぐらと揺らした。なんだ、またあの木遁小僧が何か言い出したのか!そう言いながらサクラちゃんを揺らし続けていると待って待ってください、とサクラちゃんが私の手を掴んだ。

「苦し、い…!」
「え、ああ〜ごめんごめん」
「……私はセナさんの怒りの言葉のおかげかなと思ってるんですけど」
「ん?どういうことお?」
「リハビリちゃんとして早く治すって。ヤマト隊長が」
「!」
「突然言われたからちょっと吃驚したけど…でも、すごく安心しました。なんかちゃんと前のヤマト隊長取り戻したみたいで」
「…サクラちゃん。もしかして仕事ってテンゾウのリハビリしに行くとか…?」
「え?あ、駄目ですよ、代わりませんからね。セナさんは自分の仕事をしてください」
「土下座するからお願い代わって」
「今日深月病院開ける日ですよね」
「閉める!」
「駄目に決まってるでしょ!!」
「駄目じゃない!」
「駄目です!!」
「先輩の言うことが聞けないような後輩に育ては覚えはない〜!!」
「上の言うことを聞かない先輩には言われたくありません!!」
「お前等こんなとこで何やってんだよ…」

サクラちゃんとの激しい攻防戦を繰り広げていると、向こう側から資料を持って歩いてくる人影が見えた。相変わらず器用に千本咥えてるねえゲンマ。やっほーと片手で軽く手を振ると、呆れた目でこっちを見ているのが分かった。

「後輩イジメはよくねぇぞセナ」
「私はいじめられてるのお!」
「違います!そっちが仕事放り出そうとするから!」
「深月病院閉めてこっちで職務を全うしようとしてるだけですう〜!」
「ほう、それはヤマト限定でか?」
「そう、それはヤマト限定で……」

次いで逆側から聞こえて来た声にはっと息を止める。わあ、嫌なチャクラの気配がするよお?ゲンマから目をそらしてそーっと振り向くと、素晴らしい巨乳が目に入った。隣にはトントンを抱いた貧乳も見える(こんなこと心の中でしか言えない)。

「シズネ…に、つ、なで様…おはようございますう…」
「はあ…」

こつんと頭に手を当てて舌を出すと、ウインクしてその場を誤魔化そうとしたが、シズネに小さく溜息を吐かれた。語尾に星マークがつきそうな言い方なのは単なる遊び心だ。少しは和やかな空気になるんじゃないかっていう私の優しさだ。誰か分かってください。

「あのカタブツジジイ共との話しが終わってネジの様子を見にきたのは正解だったな。そんなにヤマト限定で仕事がしたいならこっちの"ヤマト"という患者"達"の健康診断をしてきてもらおうか」

怒られるかと思いきや逆にニッと笑顔を見せられて背筋が冷える。これ何フラグ?同時にばさりと手に落とされた資料に対して疑問符を浮かべながら視線を落とすと、"大和"、"山門"、"岳斗"と色んなヤマトさんの名前が連なっている。誰だ。っていうかヤマトって名前多くないですか…そんなにこの名前需要あったの…

「サクラには第7班の隊長代理だった"ヤマト"を頼むぞ。まあセナ、安心しろ。今日はこっちから深月病院に医療忍者を派遣してやるよ。いい上司を持って幸せだなお前は。ハハハ」

作り笑い甚だしいです綱手様。サクラちゃんやシズネがその場をそそくさと離れていくのを見ていると、綱手様も満足そうに去っていった。何が嬉しくて色んなヤマトさんの相手をしに行かなきゃならんのだよ。私は"テンゾウ"の相手をですね!!

「…仕事はちゃんとするもんだぜ」
「ゲンマ代わって!」
「ふざけんな」

2014.10.24

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