続・初恋の人

「あ〜カカシィ〜世界が回ってるよお〜」
「それを俗に言う酔ってるっていうの。ちょっと髪の毛ひっぱんないでよ」
「はあ〜…………カカシのば〜か…」
「はいはい…分かったからそのまま大人しくしててネ」

一楽から連れ出したセナが足を縺れさせているのを見て、しょうがないとばかりに背中に背負うと、セナの暮らす深月病院へと歩く。人の髪の毛ひっぱったり服ひっぱったり、ちょっとどついてきたり…置き去りにするよと口から出そうになったが、またくどくどと文句を言われそうだったのでやめた。

「テンゾウはさあ〜ほんとに何にも分かってないんだよねえ〜……私がど〜して必死に薬作ったのかとかさあ…ど〜して忍を諦めるなって言ったのとかさあ〜…」
「…お前はテンゾウによく助けられてたからね」
「そ〜よお…今の私があるのはテンゾウのおかげなのよお……たくさん助けてくれたもん……テンゾウだって分かってるよねえ…テンゾウの力は…もう人を助ける為の力なんだって…分かってるよねえ…?」
「…」
「…カカシ」
「何?」
「吐きそう」
「は!!?このタイミングで!!?」

悲しそうに揺れていた声は、いつの間にか今にも嘔吐しそうな気持ち悪さの声に変わっていて、俺は慌てて草の生えた地面を探してセナを背中から降ろした。うええ…と情けない声をだすセナの背中をさすってやると、少しずつ落ち着いてきたのか力の入っていた体が緩んでいくのが分かる。

てゆーかね、お前一応女の子なんだからさ…。ふう…と息を吐いた所で、揺らりと立ち上がろうとするセナを支えようと腕を取った。

「………そういえばさぁ〜」
「今度は何?」
「カカシ好きな人いるでしょお〜…」
「また急に話し変わるね…」
「どんな人なのお…?私みたいにグラマラスな人お?」
「自分のことグラマラスなんて言うかな普通」
「いいから答えてよお〜」
「ま、お前みたいに女の子女の子はしてない子だよ」
「ふ〜ん…カカシの好みってよく分かんないなあ〜…私を振るなんてほんっと信じらんないわあ〜」
「…セナまだ酔ってるでしょ…ほら帰るよ」
「え〜もう1軒行こうよカカシ〜」
「だーめ。というより嫌」
「けち〜〜〜!!!」

1回吐いたのにも関わらず、酔いは覚めてないらしいセナを無理矢理引っ張る。全く…お前のせいで"あいつ"のこと思い出しちゃったじゃないの…。今どうしているのか、何をしているのか、ちゃんと生きているのか。生存すらも分からない想い人のことを無理矢理思い出させられて深く溜息をつくと、嫌だよおばか!なんて悪態つくセナを無視して、再び歩き出した。








「お帰りセナ〜……って、あら?」
「すみません、潰れちゃいました」

帰宅途中でまた「カカシおんぶ〜」なんて言われて、仕方なく背中に背負っていた俺は無事深月病院に着いたが、セナが鍵を持ってるとは思いつつポケットを弄る訳にもいかなかったので、迷わずインターホンを押した。すると2階の窓から現れた蝶々・キンさんがふらふらと鍵を手(羽)に、目の前のポストの上に留まった。

「付き合わせちゃったみたいだねー。ごめんねカカシ」
「いえ、俺が誘ったんですよ。ちょっと凹んでたんで」
「凹んでた?あ…テンゾウのことか」
「ま、なんで今日はそっとしておいてください」

鍵を受け取り玄関の扉を開けると、奥に続く階段を上がっていく。久しぶりに見たセナの部屋は相変わらず酷い荒れようで、至る所に本やメモ用紙が散乱していた。

「んん……テンゾ……」
「お前の気持ちも分からなくないけど…そろそろあいつに嘘つくのやめなよ」

寝言でテンゾウの名前を呼ぶセナに苦笑いを零すと、本を踏まないように気をつけながらセナをベッドの上へと下ろした。

2014.08.21

prev || list || next