希望をも込めた、絶対の自信

バタバタと小さな箱を持って火影邸の階段を駆け上がる。肩には久しぶりに外の空気を吸っているキーちゃんの姿。一昨日のこと、無事に綱手様の仕事を終えた私は今日の朝まで家に篭っていた。もちろん個人病院は締め切って薬の完成の為にひたすら本やら何やらとにらめっこしていたのである。あ、もちろん飲み会なんてもちろん行ってないよ。怒られるかなあ…まあそれよりも、ついに!!

「綱手様あ〜〜!!!!」
「なんだ?今日はいつもと違って随分騒々しいな」
「あの声はセナですかね?」
「あの馬鹿丸出しの声はセナだろ、この間の飲み会に来なかった」
「…綱手様根にもってます?」
「ふん、もういい。あいつなんか知らん!」

…等と、上記の会話がされていることなど梅雨知らず、バタン!!と勢い良く火影室の扉を開けると呆れているかのように眉尻を下げたシズネと綱手様がいた。まあ、いてもらわないとそりゃもう困るんだけどね。荒く息を吐きながら持っていた小さな箱を机に置いて、そのすぐ側にあった湯呑みを掴むとそのまま口をつけた。

「お前、それは私の茶だぞ」
「まあまあ、それよりこれ見てくださいよこれ!」
「キンも一緒か」
「それよりこっち!!」

ごくごくと湯呑みの中身を飲み干しキーちゃんに視線を寄せる綱手様に机の上へと乗せた箱を指差すと、その綱手様の眉間に若干皺が寄った。だけど、今はそれを見て怖いとか思う余裕はないのです!

「…なんだこれは」
「テンゾウに残ったほんの少しのチャクラでも服用することで一気に活性化できる液体が完成したんですよ!筋の硬直化を劇的に回復させる可能性も大いにあります、お願いです!これをテンゾウの回路チューブに追加させてくださ〜い!」
「は!?おい待て、お前一気に説明し過ぎだ!!ちゃんと説明しろ!!」
「今ちゃんと説明したじゃないですかあ〜!」
「要約しすぎだ馬鹿者!チャクラの活性化や筋の硬直化を治すことが同時にできる薬を作ることはお前1人に手が出せる程容易な物じゃないんだぞ!」
「綱手さん綱手さん、まあ箱の中身にある資料確認してくださいな。私ももちろん手助けしてますし」
「そんな薬を作っていることなど知らなかったぞ!」
「だって綱手様絶対反対するからあ!」
「当たり前だ!!ほんの少しの調合ミスが周りの人間にも被害を及ぼす代物なんだぞ!!ったくお前はほんとにっ…とりあえずその資料を貸せ!!」

ひらひらとキーちゃんが羽を動かして資料を持ち上げようとするも(まあ持ち上げられなかったともいう)、それを横からババっと綱手様に取られていた。

「セナ、貴方また勝手なことをして!」
「何よ何よお〜、だって無理だもん、これ以上待てないもん!シズネだって早くテンゾウ目が覚めればいいなって言ってたじゃんかあ!」
「そりゃあそうですけどね!物事には順序ってものがあって、綱手様も私も危険を取り払いつつ苦労して作業しているんです!」
「ぶー!じゃあなんで仲間に入れてくれないのお?」
「セナが遅刻とかサボりとかサボりとかしてるから今回の調合チームから外すことになったんでしょうが!!文句言うならその適当な自分を直しなさい!!」
「ぶゆっ」
「うわー…セナってばトントンにまで見下されてる〜…」

シズネの腕の中にいるトントンが頷いているのを見てかちんときたが、いやまあサボりも遅刻も事実なので何も言えない…で、でも、最近特にそれが多かったのはその薬の為だもんね!!冷ややかなきーちゃんの目線を受けながら頬を膨らませていると、突然椅子から綱手様が立ち上がった音で反射的に顔をそちらへと向けた。

「……これ、お前が全部やったのか?」
「え?あ、まあ…半分はキーちゃんのおかげ、そのまた半分はシカマルの頭脳をお借りしまして…」
「…ったく、本当に憎たらしい奴だよお前は…シズネ、急いでこれをチューブに繋げるぞ!」
「えっ?!だ、大丈夫なんですか?!」
「問題ないだろう。劇的に回復するかはまだなんとも言えんがな。とりあえずヤマトの所だ!」

カツカツと火影室を出て行く二人をほっとして見送っていると、背中越しに「お前も来るんだよ!」と大きな声で怒鳴られてキーちゃんを肩に乗せた私は慌てて足を急がせた。

2014.05.22

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