第7班の紅1点と師

「こーら、放浪医療忍者」
「あいたっ」

べしりと頭を叩かれて振り向いた先。こんな所滅多に人なんて来ないけど、来るとしたら大体はテンゾウと深い関わりのある人物だけだ。ナルト君とかサクラちゃんとか、いのちゃんが狙うサイ君とか(笑)。というわけで私の目に映る銀髪のこの人ももちろんテンゾウをよく知る人物の1人で、私の初恋の人でもある。木の葉の里のエリート忍者、はたけカカシ。任務終わりかな?時計を見るとあれから5時間も過ぎていた。…5時間も過ぎていた?…即座にいのちゃんに任せっぱなしの仕事を思い出した。

「っぎゃーーー!!やっばー!!カカシッ!!なんでもうちょっと早く来てくれないのおー!?」
「は?ちょっとちょっと、何意味不明なこと言ってるのヨ」
「テンゾウ!今度来る時はアレ持ってくるからねえ!!」
「何?アレって」
「殴られるう!!いや、殺されるう〜!!」
「おーいセナー……行っちゃった…」

これはさすがにマズイ。最近サボり方も遅刻も半端なかったからここら辺で巻き返しておかないといけなかったのに、久しぶりにテンゾウの顔見たら安心しきって長く居座ってしまった。大丈夫かな!?あの資料といのちゃん大丈夫かなあ!?(最早何の心配か分からない)荒々しく扉を開けて「解ッ!!」と叫び廊下へ出ると、その付近を歩いていた医療忍者さんがびくうっと体を揺らしていた。

本当にどうもすみません、だけども、これは私の命がかかっているのだ!!廊下は走らないようにと言う立場である私が廊下を走っているが、これは超緊急事態なんです。申し訳ない!とばかりに手の皺と皺を合わせて医療忍者さんの隣を走り去っていった。








「…テンゾウ、お前いつまで寝てるつもりなの?」

病室では騒がしい廊下と打って変わって、呆れたようにテンゾウに目線を寄せるカカシがいた。身体が随分衰弱しているのが目に見えて分かる。助からないかもしれないと分かっていても、テンゾウの命を繋ぐ数箇所の管が助けたいと言う気持ちを表していた。もちろん綱手然り、カカシも然り、テンゾウを知る仲間然り…だが、恐らく1番その思いが強いのはセナだろう。

「セナも結構無茶苦茶してるんだから、さっさと目くらい開けてやりなさいよ。俺とのことはもう吹っ切れてる。後はお前が頑張ればいいだけでしょ…」

それよりセナのアレってなんのことなのかねえ…最近無駄に家に篭ってたり遅刻やサボりが多いとか聞いてたけど…。大体思惑は分かる感じはするが遅刻やサボりはよくないよと声に出したカカシ。自分のことを棚にあげるというのは、まさにこういうことである。








「はい」
「えっ?!」

慌ただしく休憩室の扉を開けると、いのちゃんの座っていたはずの椅子にピンク色の髪の女の子が座っていた。あれ、サクラちゃん休憩終わった筈じゃ…まさかいのちゃんに…!?ヤバイこれは綱手様に言いつけフラグからの死亡確定率100%ってやつかなああ!!

魂が抜けたように白目を剥きそうになった瞬間、私に気付いたサクラちゃんが呆れたように1冊のノートを差し出していた。そう、それが「はい」である。

「な、何?どうしたのこれ…」
「どーせヤマト隊長の所に行ってたんでしょう?忘れ物取りにきたらいのが焦ってて…全部話し聞きましたよ」
「えーあ〜んーー…ご、ごめんねえ…?でも、このこと綱手様だけには…!!」
「ヤマト隊長のことお願いしますよ。じゃ、私仕事に戻りますね」
「へ、」

そのまま颯爽と戻っていくサクラちゃんからぽんとノートを手渡されて呆然とする私。何が起こったのか意味も分からず、とりあえず渡されたノートを開いてみた。

「……これ」

びっしりと分かりやすく書かれた調合の纏め。こんな短時間で…ぱらぱらとめくっていると一番最後のページからひらりと紙が落ちてきた。拾い上げて読み上げると、私は思わずサクラちゃんの去っていた方へ振り向いた。

[ 今回はヤマト隊長の件でチャラにしますけど、次からは綱手様に言いつけますからね。あと、纏めただけなんで、製本はセナさんの字でお願いします サクラ ]

なんて出来た後輩なの…。カカシもテンゾウもなんていい弟子を持ったんだと思わずにいられなかった瞬間であった。

2014.05.16

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