=出来上がった自分

「3代目…彼女はコウの里での記憶が全くありません。自分の名前も分からないみたいです」
「良い。彼女のことなら"ヒグレ"から聞いておる」
「…御意見番がまだ渋っているようですが…」
「儂が全て責任を持つと話しをつけておる。あの2人のことは気にするな」

「ん…?」

夢から覚めるように薄っすらと目を開けると、闇に染まった暗闇が広がっていた。あれ…私何やってたんだっけ…電気をつけようと起き上がると、ぎしりと何かが軋む。ベッド…それも、1階の…?

ぶるりと寒さに身を震わせると、自分が裸だということに気付いてんん?と首を傾げた。その瞬間、隣に人の気配を感じて顔を向けると、すうすうと寝息を立てる人物が目に映る。暗くて顔がよく見えなくてじっと見つめていると、暗さに慣れてきた目が黒髪を捉えた。

「あー…そうだったあ」

奈良家から帰宅後、違法の媚薬を吸ってしまった長期任務帰りのサスケに押し倒されて事に及んでたんだっけ。いっつもクールぶって冷静なのに、さすが違法な薬なだけあるなあ…あ、腰痛い…ズキズキと鈍い痛みが走る体に気付き苦笑いを零すと、情事中のサスケの顔が浮かんだ。イケメンは何してもイケメンってか〜。1回り近く歳も違うのに私に盛っちゃって…。ぱちりと電気をつけると、無造作に散らばるベッド下の下着や服に手を伸ばす。シーツが皺になっているのを見ると、中々激しかった様子が見受けられて思わずサスケも男だなあと呟いた。

「…もう、ちょっとは私のことも考えてよー」
「キーちゃん」
「まあサスケの様子見たら何があったかなんて言われなくても分かったけどさ。でも家に着くなり情事後の2人なんて見せられても反応に困るでしょー、私こんなでも貴方…あ、や…とにかく私のこと忘れないでよね!」
「ごめん、ごめんって〜」
「全く…私2階に行ってるからね。サスケのことどうにかしないと監視に怪しまれるよ。もう10時過ぎてるから」
「あ、そうだった〜」

ぽんっと手を叩いて、ひらひらと2階へ飛んでいくキーちゃんから視線を外すと、今だすやすやと寝ているサスケを揺すった。

「サスケ、起きて起きて」
「……あァ…?」
「もお、寝起き悪いなぁ…気分はどんな感じ?」
「…セナ?なん……っ!!?」
「あ、思い出した?」

あからさまに顔から火を出すサスケににっこりと笑みを返すと、すぐ側に設置してある小さな冷蔵庫から水を取り出した。あらあら、そんなに分かりやすく目を泳がせちゃって…あんなことがあった後に言うのはなんだが、サスケとそういう行為をするのは初めてだった。うーん、ついでに言うと、サスケはそういう行為自体初めてだったんだろうか…それぐらい狼狽しているように見えるけど…

「その……悪かった…な…」
「いいよお、サスケの意思じゃないし?あ、サスケの意思だけどサスケの意思じゃないっていうかあ…まあ気にしなくていいってことかな〜」
「……」
「でも1つ聞いていー?」
「…なんだよ、」
「サスケが吸った薬って違法の毒薬なんだよねえ。強い媚薬なんだけど、処置が少しでも遅れると快感が激痛に変わって死に至るの。固形の薬を自分の体に取り込み、少量の血を相手に付着させることで効果が発揮されるんだ。でもどこの国でも使用、生産が禁止されてるはずなんだけどお……一体どこでくノ一と戦闘になったのかなあ?」
「…極秘任務だ、言えるか」
「って言われると思ったけどねえ…あーあ、セナ身体を張ってサスケを受け止めてあげたのになあ…?」
「っ…!」
「任務場所くらい聞く権利もそれなりにあると思ったけど…しょうがないよねえ…はああ…」

ちらりとサスケを見ると、下に散らばる上着の1つを手に取りながら困ったように視線を落としている。まあ、綱手様に聞けばいずれ分かることだと思うけどねえ。…とは思うものの、綱手様だって私の質問に答えてくれるかはわからないのだ。だったらサスケから直接聞いた方が早い。

「…里へ帰還中に突然襲われた。場所は火の国から少し離れた森の中。…これでいいかよ」

ムスッとしながら答えたサスケに溜息を吐くと、私は脱力したようにサスケの隣に腰を下ろした。

2014.05.02

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