じいちゃん

「じいちゃんはあたしの言ったことなんでぜんぶ信じてくれるの?」
「なんじゃ、マトイは今まで嘘をついとったのか?」
「や、そーじゃなくてさー。みんなあたしのいうこと信じてくれないし、ホラフキだーとかおおかみおんなだーとか言われてるし。まあべつになにいわれてもあきらめてるからいいんだけど」
「ハッハッハ!マトイは大人びとるのお…」
「じいちゃんそれほめてる?」
「わしはお前のことをよく知ってる人間じゃよ?マトイが正直者ということはよく分かっとる」
「へーやっぱホカゲになるってすごいんだね。でもあたしはなりたくないや。めんどくさそう」
「ハッハッ…やはりお前は正直者じゃな…」

「良かった…目が覚めたんだな」

じいちゃんの顔が脳裏を横切った。他の人には聞こえないはずの遠くの声が聞こえる。ただそれだけのことで色んな人達に嘘付きだと罵られた幼少期。じいちゃんは火影で、凄い人で、優しかった。初めて信頼できるんだと思った人。まあ、じいちゃんとは言うものの、本当のじいちゃんではない。あたしが初めて木の葉に来た時、お世話をしてくれる人が見つからなくて結局じいちゃんにお世話になったのだ。まあじいちゃんが火影だったのもあって1人暮らしを始めたのも早かったけど。

我愛羅様の声で我に返ると、深く溜息を吐いてまた寝転がった。あー無理無理顔見たくない喋りたくない。カンクローさんと一緒にどっか行っててほしい。もちろんそんなあたしの考えは届くはずもなく、カンクローさんの視線が背中に突き刺さったまま、また我愛羅様があたしに呼びかけた。

「具合が悪いのか」
「…」
「腹が減ってるんじゃないかと思って「置いといてくださいありがとうございます」…」
「もういいじゃんよ我愛羅。それよりお前、こいつには気をつけた方が良い」
「なんだ急に」
「あーーもういいから2人ともどっか行ってください頭痛いし気持ち悪い吐きそう1人でいたい病なんですあたし」

だから、殺そうとなんかしてないっつの。‥…なーんて言えば、カンクローさんとまた言い争いになる気がしてやめた。我愛羅様は何か空気を感じ取ったのかカンクローさんをその場から連れ出し、「何かあったら呼んでくれ」と一言置いてその場から離れていった。








「ええ??……操られていた?敵に?」
「ああ。"言霊"で人を操ると言っていた」
「………マジかよ」

ヤベ‥。「で」とでも言いそうな我愛羅につい顔を歪めた俺。しょうがなくね?だってまさかそんな理由があったとか知らなかったじゃんよ…つーか早く言えよ。さっきの言い合い俺の100%負けじゃん!

「で、マトイと何を話していたんだ。随分不機嫌だったようだが」
「すげえ超予想通り…」
「カンクロウ」
「いや、俺の早とちりだったじゃん。6年前の"事件"まで掘り返して悪かったと思ってるって…」
「6年前?」
「木の葉で事件あったじゃんよ、あれで、ちょっと…」
「…ああ、」
「ん?」
「要はマトイが俺を殺そうとしたと思って問いつめていたのか」
「悪い…」
「謝罪ならマトイに。カンクロウは俺の心配をしてくれていただけのことだ」
「我愛羅…」

2017.02.24

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