お姉様とお風呂

「出会いすら覚えてないって正気かお前!」

ばしゃんっとテマリさんの周りにあるお湯が大きく揺れる。何故かお風呂の時間が一緒になってしまったテマリさんに初めて我愛羅と会った時のことを語れと言われたからそのままを伝えただけなのになんで怒鳴られてんだあたし。

おーいテマリさん、素晴らしく発達した大きなブツが丸見えですぜー。隠す程持ち合わせもない自分の胸をふにふに触りながらほう…と見比べていると、視線の先に気付いたのか「ジロジロ見るなよ」と片手で隠された。いや隠れてないけどね。

「我愛羅はまだ一尾の人柱力だった頃に会ったんだと言っていたぞ」
「らしーですねえ。それにしても素晴らしい体ですなー」
「お前変態か?我愛羅を渡したら一瞬で汚れそうで怖い」
「ていうかあたし結婚する気ないですからー」
「そんなの見てれば分かる。お前みたいに我愛羅に靡きもしない超失礼な女は産まれて初めて見た」
「わーありがとうございますー」
「褒めてない」

呆れたようにがっくり肩を落とすテマリさんは頭を抱えた。折角の有意義なお風呂の時間になるはずだったのになー…ここまで来て我愛羅様の話題やめてほしい…ばしゃばしゃとお湯を顔に浴びせるとぷはーっとどこぞのオッサンみたいに深く息を吐き出した。っていうかテマリさんは反対しないのかな、姉としてこんなのが嫁いでくるとか絶対嫌でしょ。

「あのーテマリさんー」
「なんだ?」
「なんで誰も反対しないんですかー?我愛羅様風影なんだからー可愛くて美人で頭のいいできた嫁なんて簡単に見つかると思うんですけどー」
「しょうがないだろ。我愛羅が"お前がいい"って言うんだから私達が反対する理由はない」
「うっそでしょ…」
「それにあの我愛羅が惚れ込み認めている女だ、私もお前のことを理解したいとは思ってる」
「分かった、だいぶブラコンなんですねー」
「否定はしない。もう一度言うぞ、お前発言には気をつけろ」

うわあイライラしてる…苦笑いしてすいーっとテマリさんの側から離れると、もう上がろうと湯船から出た。本当はもうちょい入ってたかったけど、このまま一緒にいたら逆上せる前に天国に行く気がする。そんなのご勘弁だ。

「そういえば火影からの手紙は受け取ったか?」
「あ!しまった忘れてた!」
「理由無しにそんなことを許可できるかと殴り書きされてたぞ」

淡々とそう告げ、金髪の髪の毛を色っぽく掻き上げたテマリさんにはっとした顔を向ける。そう言えば理由なんも明記してなかったううわすっごいめんどくさい…明日には出発したいのに…!こうしてはいられないと自分が裸なのも忘れてタオル片手に脱衣所へ走った。ロイちゃんまた口寄せしないといけないじゃんか!とろけたチーズ二つになっちゃうな…所持金を思い出しながらビシッと手を上げてテマリさんに別れを告げた。

「あいつ眼鏡外した方がイケてるな…ん…?なんだ、あれは…」








2つ分のカップを持って居間へ戻ってくると、いつの間に銭湯から帰ってきたのかマトイの姿があった。というかよく逃げなかったな、なんて言葉にしようとして慌てて口を閉じた。言ったら逃げる。

「口寄せの…あ、我愛羅様お邪魔してまーす」
「言う必要があるのか?で、何をしてる」
「見ての通り口寄せ中ですよー。さっきテマリさんに手紙の内容聞いて急いでんです。ということで口寄せの術!あ、それとロイちゃんから受け取った手紙くださーい」

そういえば渡すのをすっかり忘れていたな。ああ、となっとくしながらポケットに入れておいた手紙という名の巻物を取り出すと、寄越せと促すマトイの手にぽんと置いた。

「マトイさっきの報酬ロイもらってないッ!」
「その前にもう一仕事頼んでいーかな、報酬1個追加するからー」
「いいよッ!」

ぼふんと現れた小鼠に手を合わせて頼み込むと小鼠は簡単に了承していた。ちょろいな、と密かに呟きながら既に書き終わったらしい巻物を小鼠に渡すと、物凄い速さでその場からいなくなってしまった。本当に速い。

「何か食べるか?」
「いーですお構いなくー」

避けるように俺から離れたマトイは窓際に肘をつくと、ぼんやりと空を眺めて深く溜息を吐いていた。

2014.11.04

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