彼等は相手の味方をしたがるよね

「修羅の国?」
「そーです。まー今回の盗賊の件でちと絡んでる国なんでスパイがてら」
「スパイがてらってあんた遠足行くついでみたいに言わないでくれる?要は潜入捜査でしょ?」

(やっと)我愛羅様から離れることができた1日目の夜のことである。というか1日目からこれとか笑えない。笑えないから。…なんてぶすくれながら砂隠れの甘味処へテンテンさんとリーさんを交えての軽い任務報告。次いで明日からの任務について話していた。まあ明日からは修羅の国に行く予定だから砂とはおさらばなんだけど、どうにもこうにも我愛羅様は着いてくるそうな。テマリさんよ、砂隠れの里よ。風影を自由にさせといていいのか。よっぽど博打が趣味な綱手サンよりはマシなのかもしれないけども。

「で、それはいいんだけど綱手様に許可は貰えたの?その修羅の国って所に行くことに関して」
「もうすぐ返事貰って帰ってくると思うんですけどねー」
「帰ってくる?誰か木の葉に向かわせてるんですか?」
「小鼠ちゃんに」
「小鼠?あのチューチュー言うやつですか?」
「ブッ…それ以外に何がいるってんですか」

1人ボケか。頼んでいたきな粉のおはぎをもふもふ口に入れながら、大きな耳やヒゲを表す仕草をするリーさんに口を引きつらせる。ぜ…全然可愛くない…濃い…きな粉に噎せたのかその仕草に噎せたのか分からないがごほごほと咳をすると、目の前の温かいお茶を口の中へ流し込んだ。

「でも私、修羅の国って聞いたことないけどなあ」
「僕もです。一体どんな国なんですか?」
「そんなに期待しても何もないですよー。何せもう今では廃れた国ですからね。残骸しかないと思いますよー、もしくは死体」
「ええー?そこに行って今回盗まれてたお金と何かを交換するんでしょ?なんでわざわざ廃れた国でそんなことする必要があるんだろーね」
「まー……そこはなんともですねー…」
「明日からの任務は何か大変なことが起こりそうですね…気合いを入れなければ!!」
「今の時期寒いからってそんな無駄に暑苦しいのはやめてくださーい」

気合いの入れ過ぎてリーさんは持っていた草饅頭を握り潰し、中身の餡子が落ちていくのを見て勿体ないと思いながら中身を飲み切った湯呑みを机に置いた。テンテンさんはもう呆れてツッコミもしていない。が、ごま団子をもぐもぐと口にしながら「あっ」と突然声をあげたテンテンさんに視線を寄せた。

「なんですかー?」
「そういえば我愛羅の所にお泊まりするのよね」
「あーしますよ。荷物だけ」
「「えっ」」
「なんで2人で同じ驚き方するんですかーめんどくさくてやんなる」
「なんで荷物だけなのよ!」
「だったらマトイさんはどこに泊まるんですか?」
「テンテンさん宅」
「宅じゃないし旅館だし!しかも1人部屋だし!1人満喫してるし!もういいじゃない我愛羅の所に泊まれば」
「テンテンの言う通りです!」
「ふざけんなですよ!はあ…大体なんで1つ屋根の下で会って日も浅いような男女が一晩過ごさなきゃいけないんですかー」
「取って食われるわけじゃないでしょ」
「食われるんですか?」
「あー…リーはきっと遥かに違うことを考えてると思うわよ…とにかく!砂隠れにいる間あんたは我愛羅の所に泊まるの!いいわね!?」
「なんで!?やです泊めてくださいよテンテンさん!」
「いやよいやよも好きのうちってやつですね」
「いや本気で嫌だし!」
「あーごま団子美味しかったー。行くわよリー」
「聞けコラアアァ!!」

そのままリーさんの腕を掴んで店を出るテンテンさんを追いかける。いいもんねー別にテンテンさんが部屋に入れる気がなくたってさー。無理矢理入ってやるから覚悟しておけ!そして風影邸と逆方向に足を踏み出した瞬間あたしの足がビタッと動かなくなった。こ、この感覚はまさか…

「夕飯が甘味とはどんな甘党だお前は」
「そんなのあたしの勝手ですからねー砂を解け!」
「帰るぞ」
「ぎいやああああああ」
「あっ!我愛羅君!マトイさんのことよろしくお願いします!!」
「じゃ、また明日ねーマトイ!」

なんでここにいる!?さらさらさらと足とお腹に巻き付く砂はひょいっとあたしの体をも持ち上げた。もちろん周りにいる人達は何事だと好奇な視線を向けている。誰か助けて!と叫んだ所で誰も助けてくれないだろうね。だって相手が砂隠れの風影じゃあねーははは。この展開に若干慣れてきたのか案外冷静な自分に引く。もういっそ野宿フラグかなこれ。いや、どうせまた捕まるかな…というか、

「あたし今日何回我愛羅様に捕獲されたんだ…てかなんでここにいるって分かったんですかー?」
「マトイの口寄せが火影からの手紙を持って俺の所へ来た」
「ロイちゃん?!なんでそっちに行った?!」
「マトイのいる場所へ向かったら甘ったるい匂いがして店に入れなかったから、らしい」
「しまったロイちゃん甘い匂い苦手だった…」

2014.10.28

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