知る必要が有る

「ふざけ、てんですか…氷ノ手さんも、あたしも…?」
「ふざけてなんかない!今言ったことは全て事実よ…!信じ難いかもしれないけど…でも、これが"修羅の国"と"光の国"の真実なの!」
「……」
「…私が知ってることは伝えたわ。マトイさん、今度は貴方が教えて。翠蓮はいつ、なんで死んだのか、どうして木の葉とコウが仲良くしていたのか…分かる範囲で、いいから…」
「…木の葉とコウがどうして仲良くしてたかなんて知らないですよ。そもそもコウの里が忍里嫌ってたことすら驚いてるくらいなんですから…」
「そう………じゃあ、翠蓮のことは?」
「それは…」
「マトイ、壁に、」
「…ぐぶっ」
「ぶつかる……遅かったか」

氷ノ手さんとの会話の後彼女をヨタさん達のいる牢へ戻し、今だぎゃーぎゃー騒いでいた牢獄から放心状態のまま出るとそのままふらふらと廊下を歩き出す。我愛羅様の声なんて一言も耳に入ってこなくて、気付いた時にはすでに壁に激突していた。ヤバイ眼鏡眼鏡…ズレを直して割れてないか確認すると、後ろからぐさぐさと刺さる視線に気付いて振り向いた。我愛羅様とテマリさんがガン見している。なんだよー…くそ…ぼんやり溜息を吐くと、先程の氷ノ手さんの言葉が蘇った。

「元は"同じ"だった。私も、貴方も…"彼女達"も」
「ッ…」

"同じ"…とか、馬鹿言ってんじゃないっての…修羅の国に、木の葉の忍も一体何人が殺されたと思ってんだ…一括りに"一緒"にしないでよ…!あたしはサレナが大っ嫌いなんだよ!

「……放浪してた理由聞くの忘れたし…」

かわせみ一族。光の国、コウの里の住人でありながら放浪の旅をしていた一族。さっき氷ノ手さんに翠蓮さんのことを話したら、たった一言だけ「…そう」とだけ返ってきた。知りたそうだった割に反応が薄すぎて吃驚したわ。…ってそれは別にいい。

「…我愛羅様」
「どうした」
「明日。修羅の国に行きたいんですよ。盗んだお金分のダミーを砂隠れで作ってもらえませんかねー?」
「…」
「ま、色々確かめたいこともありますしー。このチャンス逃したら当分謎解きできないと思うんですよねー…」
「修羅の国…確か"忍殺し"で有名な国だったよな?壊滅したと聞いているが…」
「テマリさんの言う通りですよー。まあ、詳しくはいいじゃないですかー。で…我愛羅様、お願いできますかねー?」
「頼んでみよう。…ただ」
「でやってくれるような人だなんて思ってませんよー…けどまさか、俺も連れてけとか言う気は」
「俺も連れて行け」
「…テマリさんこの人風影って自覚あるんですかー?この間から自由にも程がありすぎますよー」
「お前はそろそろ我愛羅に対しての発言に気を付けろよ。仏の顔も3度までだ」
「今更すぎませんー?まあいいや」
「…ったく、我愛羅はこの女のどこに…」

あ、なんかテマリさんがぶつぶつ言い始めてる‥。若干睨みながら顎に手を当ててぶつぶつ言う姿が怖いが、見ないようにしようと視線をずらして我愛羅様へ向けた。おっとまだあたしを見ていたか…。正直な所、リーさんとテンテンさんも置いて1人で行きたい所だ。だが向こうで何があるか分からないし、もし相手と戦闘になってしまったらあたしだけで勝てる保証はどこにもない。あたしが死ぬのは別にいい。けど、"木の葉に対しての危険因子"が少しでもあることを綱手サンに直接報告しないと死んでも死に切れない。

「さっきの女から聞いた話しで思う所があるんだろう」
「!」
「ここから修羅の国までどのくらいかかる?」
「…早くて1週間ですかねー」

「木の葉に戻るまでに約2週間。それを火影が許可してくれるのであればこちらでダミーの手配をしよう」
「分かりましたよー。ほいじゃ、口寄せの術!」

我愛羅様の言葉に返事を返すとあたしな即座に親指を噛み切って印を組み、壁へ向けて手をつくと現れた真っ黒な鼠へ視線を寄せた。緊急伝達用の口寄せ鼠、ロイちゃんである。補足、足が驚異的に速く、驚異的に早口。小さい紙に殴り書きで「あたしに2週間の時間をくださいマトイより」とペンを動かしながら、ぼとっと床へ落ちたロイちゃんへ目を向けた。

「マトイ久しぶりっ!!」
「も、もうちょっとゆっくり喋ってってばー…」
「それがロイッ!!」
「分かった、分かったって…はいこれ。綱手サンに届けて返事もらってきてー。今日中に」
「報酬ッ!!」
「なんだこのちっこいのは」
「あー、緊急伝達用の口寄せ鼠ですよー」
「へえ」

テマリさんが屈んでロイちゃんをぐわしっと掴み上げているのを見ながら、ポーチの中にペンを直した。

「報酬ッ!!マトイ報酬ッ!!」
「あー…うんうん、帰ってきたらとろけたチーズね…」
「それ忘れないでねッ!ヤンキー女この手を離せッ!」
「今なんて言ったんだ?早口すぎて全然分からん…」
「ヤンキー女この手を離せ」
「なんだとコラァアア!!」

いやそこはもうちょっとオブラートに包んで言いましょうよー、テマリさん怒るの絶対分かってたじゃないですかー我愛羅様…。テマリさんに手をぐっと握られてギャヒー!と言いながら謝り倒すロイちゃんへ、あたしと我愛羅様は哀れみの視線を向けた。イヤイヤ半分我愛羅様のせいでしょ。

2014.10.22

prev || list || next