知り得る者達
「何しやがんだテメェ!!どこのどいつだ!!」
「どこのどいつって…あーそっかあたし今額当てもベストも着てないんだったわー。そりゃ分かんないですよねー」
今にも噛みつかれそうな勢いで怒声を浴びせてきた男の近くまで足を運ばせながら、んん?と首を傾げるも、自分の格好がいつもと違うことを思い出してそうかそうかと頭を掻いた。
「は、なしてよ…!この化けネズミッ…!」
「口寄せ……!?砂の忍か…!」
「あー違う違うー」
ぎゃいぎゃいと騒いでいる目の前の盗賊達に軽く溜息を吐くと、ごそごそとポケットに入れていた額当てを取り出した。それを従来つける場所である額に取り付けると、ぽんぽんと額当てに刻まれた紋章を手で示す。それを見た盗賊達が驚いた顔を浮かべていた。
「…木の葉の額当て!!」
「ピーンポーン。初めましてーどなたがヨタさーん?」
「ヨタ…!?」
「…なんで俺の名を知ってる?」
「あー貴方なのねー。とりあえずそこの女性人お2人さんはお金が入った鞄地面に置いてもらっていーですかー?」
「氷ノ手( ひのて )!クラ!お前等先に行け!!」
「わ、分かった!!」
「ルミネっちよろしくー」
「はーいはい!」
口寄せされた鳥を残して、女性2人が逃げ出そうとするのを視界に入れる。間髪入れずにルミネっちに適当な指示を飛ばすと、ズドォンというけたたましい音が鳴り響いた。一体何をしたんだー?と視線を向ければ、ルミネっちは近くにあった人3人分程の大きな岩を4、5個持ち上げて道のど真ん中へと投げ落としていた。うーん、さすが馬鹿力というか…動物版サクラさんというか…
「!」
あらまあ‥とぼんやり言葉を零していると、目の前から数人の男達がクナイやら短剣を振りかざしてきていた。
「ちょっ…あぶな!話しくらいさせてくださいよー!」
「あの金は何があっても渡せねえんだよ!!それに話し合いなんてしてる時間はない!!」
「いやちょっと待っ……もう!」
振り下ろされるクナイや短剣をひらりひらりと避けながら自分のクナイを取り出すと、後ろから襲いかかろうとしてきた敵の後ろへ瞬身の術で移動し、喉元へ刃先を当てた。
「レン!!」
「このまま喉引き裂いて、頭と胴体切り離してもいーんですよー?」
「…っ」
「あんた達が今から行こうとしてる場所も調べはついてますよー。まー個人的には正直そのお金2の次なん…うブッ!!」
「俺達一族は木の葉の忍を吐く程に嫌いだッ!」
後ろからクナイを首に突き立てていたレンと呼ばれた男に思いっきり後方へ頭突きをかまされて、そのままべしゃりと地面に尻餅をついてしまった。
「い、ったぁ…!!どんな石頭して…っ…!」
ぐわんぐわんとする頭を手で押さえていると、頭上から殺気を感じてばっと上に視線を寄せる。ギラリと光る刃先を見た瞬間にマズイ、と奥歯を噛み締めると、片手印を組んでもう片方の手で首にかけていた細長い黒の笛を取り口に素早く咥えた。
「ぐあ…!!!?」
「み、み痛い…ッ!!何…!?」
ドサリと倒れていく盗賊達を視界に入れて心の中で思わずほっと溜息をついていると、同じく大きな巨体が耳を塞ぐ姿を視界に入れてやっば、と口が勝手に引き攣る。
「マトイちゃん…私にも術かかってるから…!」
「あっははごめんルミネっちー…結構危なくて考える余裕なかったー」
「鬼!!!」
だって死にかけたんだもーん、とぶーたれつつルミネっちにかかった術だけを解く。
「………要石一族の…耳鳴りの術…?」
「ん?」
同時にルミネっちの近くからぼそりと呟かれた声に思わず反応すると、女性の内の1人が目を丸くしながらあたしを驚きの眼差しで見つめていた。
2014.08.14
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