捕獲計画実行

「なんだもう戻ってきたのか…マトイはどうした?」
「逃げられた」

風影室の資料整理をしていたテマリは、先程マトイと出掛けた筈の我愛羅が、そんなに時間も経ってないにも関わらず帰宅してきた姿を見てぴたりと動きを止めた。少しだけ可笑しそうな笑みを口元に浮かべる我愛羅を見つつ、マトイには結構嫌がられてると思うんだが我愛羅って意外としつこい所あるんだな…なんてこっそり考えながらテマリは溜息をついた。

「またか…1人うろつかせて大丈夫か?」
「大丈夫だ、逃げられてすぐ似合わない変装をしていたからすぐに分かる。任務を放棄するような奴でもない。それより、目を付けていた奴等の監視をさせている暗部から何か情報はないのか?」
「もうすぐ鳥が飛んでくる頃だと思うが……あ、」
「…丁度良いタイミングだ」

会話の最中に、監視をするよう告げていた暗部専用の鳥が外から飛んでくるのが見えて我愛羅は窓に手をかけ、机の上に羽を休めた所で鳥の足に結びつけられた紙を受け取ると、背中を撫でて持ち場に戻るよう促し紙を広げた。

「…成る程」
「?」
「マトイの話しと同じだ。テマリ、暗部に里から逃がすなと通達を出してくれ」
「やっぱり睨んでいた奴等がそうだったのか」
「ああ。かわせみ一族というらしい」
「かわせみ一族?聞いたことないな…」
「どこの里から来たかは分からないが、盗賊を装った忍だそうだ。とにかく伝達を頼む」
「あ、ああ分かった」

そのまま風影室から出て行くテマリを見送ると、我愛羅は暗部から送られてきた紙を見ながら椅子へと腰掛けた。暗部の寄越してきた情報の中にはマトイの告げた情報も記載してあり、確信するように顔を上げる。

男9名 女2名
ヨタ レン イヅキ と呼ばれる男 他
氷ノ手 クラ 以上2名の女
砂の忍を装い里の内部を捜索
換金所に記録有り、隠れ里不明

何か特別大事な物を買う為のお金。とは言え盗んだお金。返してもらわないと示しも付かないが、何を思ったかマトイは私に任せてほしい、手出ししないでほしいと告げた。さてどうしたものかと我愛羅は腕組む。窓際へと目線を寄せ、右手の人差し指と中指で右眼を隠すと砂で目を作り出した。そのままふよふよと浮かび上がったそれは、全く男の服装が板についていないマトイの近くに向かって近付いて行った。








「おっととと、」

てくてくと散歩と称した盗み聞き調査を行っていると、「見たことのない人だねえ」とこそこそ噂をしている砂の住民の声を耳に入れて、その情報を頼りに里を歩き回っていたのだが、ついにその人物達を見つけてこっそり物陰に隠れていた。目の前には岩に上手く身を隠し、口寄せを使って空から里を出ようとしている数人の人影が見える。あーそれはちょっと待ってほしいなーと印を組むと、ぼふんと現れた大きな巨体をぶん投げた。

「あれマトイちゃ……って!!呼び出されてなんで投げられるのー!?」
「なんだ?!」
「で…でっかいネズミ!!?」
「ちょっと話しがあるんでー里から逃げるのちょっと待ってもらえませーん??ルミネっちその人達捕まえてー」

大きな大きな鼠の姿に慌てふためく人物達の中の一人が、あたしに気付いて急いで鳥に乗る姿が見えた。しかしあたしの口寄せ動物であるルミネっち(あだ名)は身長2mという高さ(しかもぽっちゃり系)。困惑顔ながら飛び立つ鳥をむんずっと掴んだルミネっちは、とりあえずと言わんばかりに鳥を地面へと叩きつけた。

「…それでマトイちゃんこれどういう状況ー!?あ、ちょっとそっちも飛び立ったらだめ!」
「ビィッ!!?」
「きゃあああ!!」

びたんびたんと地面に叩きつけていく鳥が悲痛な鳴き声を上げる姿を見つつ、おいおいルミネっち馬鹿力すごいんだから加減してあげなよーと苦笑いを零していると、叩きつけられた鳥に乗る1人の男が呻きながらこちらを睨んでいた。

2014.08.08

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