共に未来を見たい

「ハヤ先生こっち終わったよー!」
「お仕事が早いですねとらさん。さすがです」
「えへへ」
「半分刈った〜!!刈ったぜ〜おれ!!」
「馬鹿お前そっち刈ったらいけねーとこだし!」
「またやらかしましたかそらさん…今度は何を…」
「ハーブの畑を刈りやがったんだよ!」
「…そらさん本当にいい加減にしてくださいね」

下忍チームの隊長代理として2人の男の子と1人の可愛い女の子の居る班に1日限定で配属された私は、現在フォーマンセルで稲刈りの任務中だ。広大な面積がありとても1日で刈れる量ではない気がしないでもないけど任務であるからにはしょうがない。1人直径約2kmをこなす役目を与えて3時間、私と女の子のとらさんは綺麗に刈り取って任務を終えた。しかし、向こうで稲刈りに奮闘している男の子のそらさんとゆらさんはとても大変そうである。主にゆらさんは、そらさんの無駄な刈り取り作業に気を取られ足を引っ張られているだけのようだが…

「もー、しょうがないなあ…とらも手伝ってあげる!ハヤ先生いいー?」
「お気持ちはとっても嬉しいのですが、女の子のとらさんが出来て男の子のそらさんが出来ないなんてある訳がないですよね?」
「任せろって!おれ綺麗に刈り取るから!」
「稲だけですよ。またハーブを刈ったらお仕置きしますからね」
「おいとら、こっち手伝え」
「ゆらさんも駄目です。1人でやってください。とらさんは私と休憩しましょうね」
「だってー!じゃあねゆら頑張ってね〜!」
「…なんかハヤ先生とらに甘くね?」
「これは任務ですよ、ゆらさん」

じゃあ行きましょうかととらさんの手を取って近くの岩へ腰を降ろした。正直子供は苦手なんだけど、とらさんは物凄くいい子すぎて苦手だなんて感じなかった。Dランクながらも任務は卒なくこなすしっかり者。おまけに礼儀正しくて可愛いときた。こういう子が自分の子供だったらなあ…なんてらしくないことをぼんやり思い浮かべ、任務中に一体何を考えているんだと頭を振った。

「ねー、なんでハヤ先生はとらのこともゆらのこともそらのことも"さん"付けするんですかー?」
「会ったばかりですし、まだ大して仲良くないからですよ。相手に失礼かなとも思いますし」
「えー!?とらやだ!!ハヤ先生と仲良くしたいからとらって呼んでください!」
「えっ…」

ぷん!と眉を寄せて、声を張るとらさんに目を見開く。…面と向かってそんなこと、言われたことなかった…しかも年下の女の子に…ポーチから取り出した小さな水筒に口を付けたまま動きがピタッと止まる。とらさんの無垢でキラキラしてる目が輝いて、いつもなら「嫌ですよ」なんて言う口が勝手に違う言葉を紡いでいた。

「…とら、ちゃん」
「とらちゃん!じゃあこれでとらはハヤ先生と仲良くなったんだね!やったあ!」
「…」

子供って…こんなに可愛かったでしたっけ…?花を飛ばすようにきゃっきゃとするとらちゃんを見て、なんだかぽわっとよく分からない感情が芽生えた。…ような気がした。子供……ネ、ネジとの…。

「ハヤ先生!!?どうしたんですかー!!?」








「ハヤ。任務は終わったのか?」
「ネジも任務だったんですか?」

無事にハヤの任務も見届け、丁度鉢合わせたように火影邸の前で声をかける。俺の任務はハヤの護衛だからな、とは言えずに「まあ、そんな所だ」と言葉を濁す。それを少しも疑問に思うことなくお疲れ様ですと言いながら笑ったハヤに俺も笑い返した。

「そうだ。今から病院に荷物を取りに行くんだ。そんなに大した量の荷物はないが…よかったら一緒にどうだ?」
「あ、そういえばそうでしたね…是非。お付き合いしますよ」

そう言ってふんわり笑ったハヤの手を取ると、ほんのり頬を染めて困ったように下を向いていた。…そういえば、今日の任務中珍しく1人の女の子と仲良さげに話していたな。子供が好きじゃないハヤが、珍しい…

「今日の…ネジの任務はどうでしたか?」
「ああ、まあ…以前と同じようにこなせたよ」
「そ、そうですか。そうですよね…」
「ハヤこそどうだったんだ?」
「いっ…いつも通りでした!」
「そ、そうか…?」

の割りにはいつもと様子が違うが。何を動揺しているのかは分からないが、任務を見ていても何も心配するようなことはなかったのでそれ以上は言わなかった。

2015.01.29

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