幸せと平和が欲しかった

「……ん、…」

暖かい温度にぼんやりとしながら目を開けると視界に映った真っ白な色に疑問が浮かぶ。まだ夢の中でしょうか…そう思いながら真っ白なそれを握りしめてみると、くしゃりと皺が寄った。

「?」

あれ、ここどこでしたっけ。昨日確か綱手さんに呼ばれて…と、記憶が蘇ってきたところで見上げてみた。そこにあったのはいつも威厳のオーラを纏っている顔を無防備に緩ませた、ネジの寝顔があるではないか。

「ーー!!」

そして、大きな声を出しそうだった口を慌てて自分の両手で塞いだ。…そうでした、ネジの部屋に泊まったんでした‥。近くの時計に気付いて見てみると6時過ぎ。もう修行の時間です。そっと掛け布団を持ち上げて起こさないように抜け出すと、冷たい空気が体にまとわりついて刺激する。寒い。さてこれからどうしようかときょろきょろしていると、腕にあった重みがなくなったことに気付いたのかネジの瞼が薄っすらと持ち上がっていく。

「……ハヤ…?起き…っ…」
「お、おはようございます…?」

途端にぎょっと目を剥いて私を見るネジに首を傾げると、凄い勢いで近くにあった毛布を体に掛けられる。な、何、何?というか覚醒するの早いですね驚きました、と言うより早くネジの顔が真っ赤になった。

「服の…留め具が、外れてる…!」
「え?」

なんのことだろうかとそっと自分の忍服を確認してみると、首元近くに3個留めてあるはずの留め具が外れていて、ぺろんと中に着ている白い下着まで丸見えになっていた。

「きっ…きゃあああ!!?!!?」








「…その、よかったな、家に誰もいなくて…」
「お見苦しい物をお見せしました…すみません、頬っぺた…痛いですか…?」

あの後、驚いた拍子にネジの頬をパーでビンタしてしまった為に少し赤く色付いていたそれを恐る恐る見つめると、ネジはほんの少し苦笑いして「大丈夫だ」と答えてくれた。恐らく寝ている間に少しだけ苦しくなったんだろう。寝る時にこんなぴっちりした服着ませんからね…

「…あ、では到着しましたのでここで。送ってくれてありがとうございました」
「ああ。悪かったな、その…修行の時間潰してしまって…任務、気をつけろよ」
「うっ…すみませんでした……あの、今朝のことは…早めに忘れてくださいね…」
「…忘れた方がいいか?」
「も、もちろんです!」

私の返しの速さにまた彼は笑った。この人遊んでるんじゃないでしょうね…むっとしていると、悪い、なんて言いながら頭を撫でてくるネジ。敵わない、本当に。私は軽く笑みを零し、それではと火影邸の中に入る為に背中を向けた。今日も1日頑張りましょうか。ネジも無事に退院したことですし…

「……」

やっとネジと普通に過ごせる日常が戻ってきたということに、この時の私の足は浮き足立っていた。








「…で?お前は何をしにきたんだ?」

ハヤが任務に出たのを確認して、俺は火影室に足を運んでいた。ハヤの護衛任務についてヒアシ様から聞いていたとは言え、まだ綱手様からは何も聞かされていなかったからだ。

「…綱手様からの伝言で、ハヤの護衛任務に就いてほしいとヒアシ様からお伺いしました」
「その通りだ。分かってるんだったら早く行け。今日ハヤには下忍の班の隊長代理をしてもらっている。里内とは言えもし何者かに襲撃されたら危険だ」
「白虎…封印の器というのは一体どういう物なんですか?他にも封印の器がいると聞きましたが…」
「…」
「狙われる程の危険な物だなんて、俺は…」
「私もその辺に関しては熟知していないんだ。調べてはいるがな…ただ、今はシカマルも躍起になって書庫を漁ってくれている、分かったら情報回してやるから」
「シカマルが……?」
「……お前が考えているヤツの為に、ではないから安心しろ。とっととハヤの所に行け」

俺の眉間の皺が寄っているのに気付いた綱手様が、呆れたように顔を崩しながら溜息をついていた。

2014.12.15

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