犬塚キバ

「どこ行ったんだろ…もう…」

シカマルを探すこと数10分、そもそもどこに行ったのかも分からないのに手当たり次第に歩いても意味がないかと考え直して足を止めた。なんだかなあ。私シカマルと変な喧嘩みたいなのはもう懲り懲りなんだけど…内勤だと思うけど私だって任務あるだろうし、今は諦めるしかないかな…。

溜息を吐き足元にあった小さな石ころをコツンと蹴ると、ころころと地面の上を転がっていく。っていうか、シカマルに説得するとか言う前にヨシノさんにきちんと伝えなきゃいけない。また心配されちゃう。

「ワン!!」
「えっ…て!?」

大きな鳴き声が突然頭上から降ってきて、驚いて下に向けていた顔を上げる。ぴょーんと頭上を飛び越えたそれは私の後ろで着地すると、タックルするように背中に激突した。待って!?鉄板とかだったら私完全に怪我してるから!!慌てて振り向いて、わしわしと白い毛並みを撫でて眉尻を垂れさせると、飼い主がどこかにいるんじゃないかと目をきょろきょろさせた。

「キバ!近くにいるんでしょー!!?」
「上だっつーの!」

白い毛並みの持ち主である赤丸をもふっと抱き締めながら近くの木の上を見上げると、ははっと笑いながら木の上から飛び降りるキバの姿を見て、思わず頬っぺたを膨らませた。

「あんまり吃驚させないでよー赤丸大きいんだから!敵だと思ってクナイ取り出してたらどうするの!」
「なんの心配だよ。赤丸がコトメの不意打ちくらうわけねーだろー?」
「馬鹿にするのはやめろー!」
「はは!…っつーかなんだ、この間より元気になってんなー」
「私はいっつも元気ですう〜」
「心配してやってたのになんつー言い草だコラ!」
「いひゃ、ひひゃいはへへおー!」

ちょっと嫌味くさくべーっと舌を出せば、イラっとしたキバが私の両頬を上下に引っ張り上げた。赤丸助けて!とばかりに背中をバシバシと叩く。主に忠実な赤丸は小さくクウーンと鳴いただけだった。畜生。

「…ま、ってことはシカマルと仲直りしたんだな」
「だから、なんかあったわけじゃないってばー…うう頬っぺた痛…」
「元気ないとか珍しかったからコトメのことちょい気にかかってたんだよ」
「何急に優しくなってんの」
「俺はいっつも優しいだろーが」
「寝言は寝て言えー!!」
「てめー覚悟しろ!」

キバにぐいっと両肩を掴まれ羽交い締めにされながら、私が抱き締めていた赤丸も楽しいこと始まった!とでも言いたいかのようにぼふぼふと白い毛並みをすりつけてくる。実際嫌なんだけど、キバや赤丸とこういう風に戯れるのはだいぶ久しぶりで、思わず顔が緩む。

「私女の子だよ加減して!痛い!」

そう言いながらも笑うとキバも笑った。シカマル経由で仲良くなったキバとは普段からこんな感じだった。お兄ちゃんがいたら、こんな感じだったんじゃないかな…と思いながらも本当のお兄ちゃんのことを思い出して少し目を伏せる。

「…あ。で、キバこんな所で何やってたの?」
「いや別に?待機室向かう途中にコトメ見つけたから。そんだけ」
「何それ」
「お、そうだ!今日、久しぶりに一緒に飯でも食いに行かねえ?奢んねーけど」
「えー!奢ってくれるなら行くのに!」
「甘いんだよ。俺の稼ぎ見くびんな」
「そんなこと自慢するな〜」
「で、行くの行かねえの?」
「しょうがないから行ってあげましょう!」
「上から目線で言うな。じゃあ20時に焼肉Qな」
「え〜!?また焼肉〜!?」
「またってなんだよ。しかも3人だろ。赤丸も行くし」
「ワンッ!!」
「なんか違う…まあいいや、分かった!」

他愛もない話に相槌を打つと、それに納得したキバは私から手を離して待機室へ赤丸と共に駆け出して行った。

キバって大概私が悩んでたりしてる時に姿現すよな〜。なんて、キバの後ろ姿をぼやーっと見ながら、私はシカマル探しを諦めて内勤の任務を受けに足を返した。

2014.12.24

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