揺れる先のなにか

「綱手様、コトメです!」
「?入れ」

朝、珍しく修行する前に火影室へと足を運んでいた私は綱手様がいるであろう扉を叩いて開けた。こんなに朝早くからなんだ、とでも言いたいのか片手で欠伸を隠しながら視線を私に向けている。‥昨日の夜、ロウさんと約束をした。1週間後に木の葉を離れて、1人岩狼豪へ修行に行くということを。そのことを綱手様に伝える為にここまできたのだ。

「随分シケた面をしているが何かあったのか?」
「…つ、綱手様にお願いがあって来ました」
「お願い?」

ん?と、眉間の皺を寄せて首を傾げた綱手様に、なんとかこくこくと首だけを縦に動かした。な、なんか言われるのは想定内だよ、だって青龍の器だから任務は内勤ばっかりになるけどって言われてたもんね。里の外に出したくないってことだし、そんなの私みたいなバカでもよく分かる。でも、少々の危険を犯しても、強くなることができるなら…

「火影には自分から言いなさい。貴方が決めたこと、私は間に入らないから」
「…はい、分かってます」

「なんだ、…どうした?」

ぎゅっと両手を握りしめると、ほんの少しだけ深呼吸をしてしっかりと口を開いた。

「…半年程木の葉を出て修行に出向きたいので、里を出る許可を貰いにきました」
「…は?」
「口寄せの…ロウさんが住む岩狼豪という所で修行をつけてくれると、昨日約束してくれました。日暮硯一族の秘術を0からみっちり教えてくれるそうです」
「…お前今の自分の状況が分かって言っているのか」
「分かっているつもりです…だからこそ、修行に出るべきだと思いました」
「…」
「私は…もしものことがあった時に、私の術で仲間を殺したくありません…守りたい、んです…」
「!」
「お願いします、綱手様」

がばっと上半身を折ると、そっと左腕を右手で掴む。無言を貫く綱手様の口が開くのを待った。やっぱり許してくれないのかな…でもその時は、無理矢理にでも…と考えていた時である。ノックも声掛けもせずに私の後ろにある扉が開く音がして、同時に首根っこを掴まれ顔を無理矢理上げられた。

「いった…!?」
「ノックくらいしろ、シカマル」
「すんません。ちょっとコイツ借りていきます」
「はあ!?ちょっ‥シカマル意味わかんなっ…」
「うるせぇ、来い」

なんで綱手様より偉そうなの!?眉間に皺を寄せて何かに怒っているシカマルはそれだけ言うと、ズルズルと部屋の外へ私を連れ出して行った。

「何故私が蚊帳の外なんだ…」








「いた、痛いってば!!なんなの!?」
「…お前何考えてんの」
「何考えてんのってこっちが聞きたいんだけど!!今綱手様と大事な話ししてたんだよ!?」
「ナルトじゃねーんだから、里を出る必要なんかないだろ」
「また盗み聞きしてたの?もう…」
「自分が里を出て危険だってことくらい分かってんだよな?だったら時間掛かってもいいから里にいろよ」
「それを決めるのはシカマルじゃないよ!」

なんでそんな子供みたいなこと言うの…?シカマル、らしくない…!首根っこを掴む手を振りほどいて後ろを向く。シカマルを真正面から見据えようと目を捉えた瞬間、何故かギリッと口を噛み締めたシカマルがいた。

2014.12.01

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