無意識の中に答えはあるのか、

「あ、のよ……」
「んん、何?」
「……」
「?」

何かを言いかけてすぐに口篭ったシカマルに首を傾げる。っていうか何その気まずそ〜な顔…何か言いたいことでもあるならさっさと言ってよ、また悪い方に考えちゃうよ私…。何度も何かを言いかけてはやめる姿にシカマルお得意のめんどくせーを口にしようと思ったけど、あまりにも困ったように眉間に皺を寄せて私から視線を反らすから、なんだかそれも言いにくい。

「俺は…」
「そうじゃないんだってば……私………私、シカマルが好きなのに…そんなこと言われて嬉しいなんて思うわけないじゃん…!」

「あ」

…って、ついシカマルの言葉と被ってしまった。折角何か言いかけてたのに、とは思ったが何を言いたかったのか分かった気がする。というか私はこの件についても悩んでいたはずだった…すっかり頭から飛んでいた。‥本人にカミングアウトしてしまった私の気持ち。思いっきり振られることなんて分かり切ってるからね。だってシカマルはハヤさんが好きなんだもん。

「あのな…折角話を…」
「いいよ」
「ちょっと待て、俺はまだなんも言ってねえ」
「シカマルの顔見たら嫌でも分かっちゃった」
「…」
「思いっきり振っていいよ」
「!」
「でも簡単に諦められないって分かったから…そ、そそそれだけ言っておく!」
「………なんだそりゃ」
「来い!!」

ギッ!と目をかっ開いてシカマルを見つめると、なんだか拍子抜けしたような呆れたような表情を浮かべて笑った。呆れたようなって失礼だよ乙女に向かって!しかし強気を振舞ってはいるが、少しでも気が緩むと涙腺崩壊するかもしれない。まあ人生1回や2回振られることもあるさ、うん。自分にそう言い聞かせて奥歯を噛み締めた。

「…お前の気持ちには答えられねェ…」
「うっ…ぐ、…ッ生易しい!!」
「めんどくせーな…最後まで聞け」
「聞いた!!」
「自己判断すんな!……お前の気持ちには答えられねェんだよ。…今は」
「2回も言われた……………今、は?」
「なんかよく分かんねーけど…なんか……今のお前見てたら…」
「……?」
「ちくしょ、意味わかんね…めんどくせー…」
「めんどくさい!?ここで!?ここはめんどくさがったらダメなシーンでしょっ!?」
「いやお前シーンってなんだよ例え変だろ」
「変じゃない!!大体シカマルそんなんだから優男って言われるんだよ!!」
「誰に言われんだっつーの」
「私!!」
「お前かよ」

いつの間にか緊張感の張り詰めていた空気は無くなっていて、笑みを零し始めたシカマルに私もつい頬が緩む。

「コトメ」
「ん?」
「俺は「はいはーい!コトメちゃん貴方に届け物だよお〜」…」

何かを言いかけるシカマルの背後から、先程綱手様と出て行った筈のセナさんがにょきっと顔を出してきて、思わず背中をびくりとさせてしまった。いやいつ入ってきたの!?心底迷惑そうな顔を浮かべ溜息を吐いたシカマルを無視して、セナさんは私に何かを差し出している。シカマルがくれた茜色の髪紐。思わず目を見開くと、ばばっとセナさんへ視線を向けた。

「あ…これ!!」
「さっき"コトメが髪紐落としたらしいから探しに行け"って綱手様に言われてえ〜…酷いよねえ、仕事頼んどいてさらに仕事頼むとか……あ、落し物ってこれだったあ?キレーな茜色だねえ」
「あ、あありがとうございます!!!よかったあー…!」
「うふふ、コトメちゃんのその髪の毛の色とぴったりだねえ、プレゼントか何かかなあ?だったらそれ贈ってくれた人、コトメちゃんのことよく分かってくれてる人なんだねえ〜まあ羨ましい!」
「あ、そ、そうなんですかね…?」
「だってえ、赤の色なんて色々あるのにその色選ぶなんてコトメちゃんのことよく見「おいセナさん仕事なんじゃねーの」あ!!やだあまた怒られちゃう!!じゃ、じゃあ私綱手様の所戻るからあ!!」

会話も途中に、そのまま慌ただしく病室から駆け出して行ったセナさんを目を点にしたまま見送ると、隣でむすっとしたシカマルが「間が悪ィんだよあの人…」と掌で口元を抑えながら溜息を零していた。

2014.10.04

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