手繰り寄せる糸

「わ、ちょっとまだ起き上がったらだーあめ!無理に動かない方がいいって言ったでしょお?」
「だって、シカマルが…」
「コトメちゃんは自分の体の心配しないとお」

ふらふらと立ち上がった私に慌てて手を伸ばしたセナさんは、がしりと腕を掴むとそのままベッドへ引き摺り下ろしていた。ちょっと話しを聞きたいだけなのにと言いかけて、いや待てよ、私今シカマルと喧嘩(?)中だったと口を噤む。でもやはり気になるものは気になるのだ、そう思いながらキバに目を向けると、呆れたように溜息を吐かれてむっと頬を膨らませた。

「お前等ホンット面倒くせーっつーの…喧嘩の原因はなんだよ…」
「喧嘩って…別に喧嘩したわけじゃないもん。っていうか何それ、シカマルがなんか言ってたの?」
「様子が変だったんだよ、なんか」
「へ?」
「ま、つーかコイツ思ったより全然元気なんだな、心配して損したぜ」
「心配損なんて〜そんな大した怪我とかもないんだから〜この子結構丈夫だしい」
「話しそらすなっ!」

私を蚊帳の外にし出した2人に少なからず頭をイラつかせつつ、シカマルの様子が変だということは気にかかるが、とりあえず無事ではあるみたいだしいいかと胸を撫で下ろした。

それにしても、自分の故郷であると言われた光の国・コウの里の謎は深まる一方で、セナさんのことも気にかかる。とは言え、キバがいるここで直接聞けないし…目元の緊張が緩くなっていくのを感じてゆっくりと瞼を動かすと、やっと開けた視界には深月セナさんと思われる女性の人物とキバが映っていた。








「何があったか覚えてない?」
「さっきセナさんにもそう伝えたんスけど…」
「本当に何も覚えてないのか?」
「自分でも驚くくらい記憶に残ってないんスよ。さっきよりはマシですけど、頭もいてーし」
「…まあ覚えてないことはしょうがないが…お前がすっ転んで頭をぶつけた、というのに少々疑問が残るな」
「私も、そう思います…」

シカマルの病室へと足を運んでいた綱手は、一体何があったのかという理由を本人から聞いていたが、記憶のないシカマルはその問いに首を横に降るばかりで深く溜息を吐いた。ほぼ同時刻にコトメも中忍待機室で死んだと思われていた自分の兄と接触しており、その近くの道を通っていたらしいシカマルももしかするとそれと関連した事件に巻き込まれたのではないかと考えていたが、本人の記憶がないのではどうしようもない。困ったように綱手に頷き返すヒナタも、心配そうに眉間に皺を寄せていた。キバとヒナタ同様、シカマルが何もない所で転んで頭を打つなんてことはないだろうと考えていた綱手は、ドアを開けて近くの看護婦を呼びつけた。

「山中いのを呼んできてくれ」
「え、山中さんなら今医療研修中ですが…」
「構わん、あいつに仕事を頼みたいんだ」

その言葉に「分かりました」と頷き返した看護婦を見送ってシカマルの方へと振り向いた綱手は、今だ頭痛がするのか眉間を寄せるシカマルを見ていつもと何か少し様子が違うことに気付き、思わず顔を寄せた。

「…?」
「なんスか?」
「お前……ほんの少しだがチャクラが乱れてるぞ。しかも……別のチャクラが混じってるような…」
「な、」
「私では特定できないな…ヒナタ、白眼で見えないか?」
「や、やってみます…白眼!」

綱手の言葉で白眼を見せたヒナタはシカマルの経絡系へと視線を寄せる。そして数分黙り込むと、何かを発見したのか声を大きく上げた。

「こ、これ…!」
「何か分かったか?」

驚くように顔を上げたヒナタは困惑するように視線を下げた。それに気付いた綱手は眉間に皺を寄せてヒナタの言葉を待つ。そして、黙り込んでいたヒナタはおずおずと口を小さく開いた。

「…癒無眼を開いた時と同じチャクラが混ざってる…」
「!」
「…ユムガン…?」

聞きなれない言葉に首を傾げるシカマルは、その言葉に驚いた綱手に顔を向けてぼそりと呟いた。なんで、そんなに驚いてんだ…?同じように驚きながらも困惑した表情を浮かべるヒナタに嫌な予感を感じ取ると、口を閉じて生唾を飲み込んだ。

2014.08.06

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