故郷は謎ばかり

「オレンジの、髪の毛…」
「無理に開けようとしなくていいよお、一時的ショックならそのうち自然に開くからあ。で、何があったのお?」
「あ、あの…」
「お前は余計なことに首を突っ込まなくていいからさっさと仕事をしろ。私よりお前の方がその封印術に詳しいから呼んだんだぞ」

思わず言いかけた所で綱手様が話に割って入ってきた。言わない…方がいいのかな。無理矢理瞼を持ち上げていた力を解きながら綱手様が話してくれたことを思い出した。確か封印の器はあと何人か居たはず。だったらそのうちの1人って…

「…あの…!」
「あ、違うよお。ん?違うって言い方も変かなあ…コトメちゃんは私が封印の器なのか聞きたいんだよねえ?」
「は、い…」
「私はちょっと特殊なのお」
「?」

ふふっと小さく笑う声が聞こえて私は思わず首を傾げた。よく分からない…私が光の国のことを知ったのはつい最近だし、分からないのは当たり前なんだけど…ぺたぺたと体のあちこちを触られて満足したように「終わり終わり〜」と気の抜けたような声を発したセナさんが、私の腕にグローブをつけてくれているのが分かり、お礼を述べる。すると、綱手様と話し始める声が聞こえてきた。

「…どうだ?」
「別に心配することはないですよお、変な所特にないし〜、怪我は綱手様も考えてる通り今日しっかり休めば痛みも和らぐのではないかとお」
「そうか…アイツにも話しを聞きに行った方がいいな…コトメ、お前今日はここで休んでろ。話しは後で聞きにくる。セナもここで待機しておけ」
「え〜!?なんでえ!?」
「うるさいな!こいつの護衛を任せた奴の所に行くんだよ!」
「私も一応護衛対象じゃないですかあ!」
「お前の護衛は暗部がその辺にいるからいいだろうが!黙ってそこにいろ!」

なんだろう、綱手様に楯突くというか綱手様と仲がいいというか…声を聞く限り綱手様よりもだいぶ若そうなんだけど、セナさんってかなり肝座ってる人なのかな…そのまま扉を開閉する音が聞こえてびくりと背中を震わせていると、「もおお!」という大きな声が室内に響き渡った。

「綱手様ほんと酷いんだから!私テンゾウのとこ戻りたかったのにい…」
「テンゾウ?」
「あ、いいのいいのこっちの話しだからあ!」

「エヘッ」という効果音がつきそうな言い方をするセナさんに、はあと緩く返事をするとそのままもそもそと掛け布団を引っ張り上げる。‥そうだ!セナさんになら、光の国のこととか封印の器のこととかもっと聞けるはずだと、私は気配のある方に顔を向けた。なあに〜?なんてくすくす笑うセナさんの声が聞こえる。多分私の言いたいことが分かってるんだと思って、それならばと口を開いた。

「あの……光の…、…どこから聞けばいいか分からないんですけど……その、光の国ってどんな所だったんですか?」
「ん〜、私自身に記憶はないからなあ…」
「そ、そうなんですか…」
「や、色々知ってるのは知ってるけどお、なんか話しややこしくなるの面倒だしい…まあ個人的に調べたんだあ。光の国については」
「?」
「えっとねえ、光の国っていうのはとある"国"が分裂した"片割れ"なのよお。…あ!これ誰にも言っちゃダメだよお!」
「ええ?!なんで言ったんですか!?」
「だってコトメちゃんが知りたがってるみたいだったしい」
「ええ!?いやそうなんですけど…ええ…」

あっけらかんとそう言うセナさんに、私聞く人間違えたのかな…と不安になった。誰にも言っちゃ駄目なのに簡単にそれを口にするなんてなんか…ねえ…

「それでえ、分裂する前に神獣の奪い合いみたいなのがあってえ、で、光の国側が勝ってえ、そっからずーっと光の国が神獣を護ってきたのお。っていう国?」
「いやあの私に聞かれても…分裂、って、どこと分裂したんですか?」
「それは…」
「邪魔すんぜコトメー!」

何かを言いかけていた瞬間、大きくドアを開ける音と同時に別の声が聞こえてきた。間が悪いなあと溜息を吐いていると、後ろから「ワン!!」という鳴き声も聞こえ、キバだと思わず顔を顰める。今朝喧嘩したからね、無駄な喧嘩。あからさまにぷいっと顔を反らすと、何故かキバは「げっ」と声を漏らしていた。げっ、てなんだ。

「セナさんまだいたのかよ…」
「綱手様からここで待機しとけって言われてえ…っていうかあ、キバは何やってんのお?シカマルは??」
「ヒナタに任せてコイツの様子見に来たんだよ。なんか文句あるか」
「ねえキバ、私一応年上だよお?もうちょっと敬ってほしいんですけどお、その生意気な言葉遣いとかあ!」
「はいはいすみませんでしたー」
「可愛くない〜!」
「…シカマル、なんかあったの…?」

2人の会話を聞きながら妙に引っかかる言葉に疑問を感じた。ヒナタに任せて私の様子を見に来たって…ゆっくりと上体を起こしていると、誰かの手が背中を支えてくれていた。

「あんまり無理に動かない方がいいよお」
「大丈夫です…それよりシカマル、どうしたんですか?」
「外で倒れてるの見つけて今さっき目を開けたんだよ。ただ転んで頭打ってるだけみたいだから気にすんな」
「シカマルが転んで頭打った?」
「ウケるよな。ナルトならまだしもシカマルだぜ?」
「…どこで倒れてたの?」
「あー、確か中忍待機所の近くの通りだったっけな…頭打ってその時の記憶もねーんだとよ。それよりお前こそ大丈夫かよ?なんで目閉じたままなんだ?」
「一時的ショックですう」
「セナさんに聞いてねーっつーの!」
「……」
「コトメ?」

何故か嫌な予感がする。だってあのシカマルが、だよ。でもお兄ちゃんが私に手を出してきたのは間違いないし…もしかしたらお兄ちゃんの仲間が近くにいたとか…?

「あ、綱手様にシカマルの記憶ないの言うの忘れてた…ってコトメちゃん?」

黙り込んだ私に話しかけ始めたキバとセナさんの声を無視して、よろよろと布団から立ち上がった。

2014.07.02

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