生存者

日暮硯、疾玖…?
【 アイツは一族の中でも強い忍だった日暮硯シキミの一人息子…いや、もう1人娘もいたような… 】
えーっと…すみませんそれ、もしかしてというかもしかしなくても…その娘って私です…
【 ほう 】
…信じてませんよね?
【 シキミとあまり似てないなと思ってな…どちらかというと父親似が‥?いや、まあいい。シキミの娘が封印の器であるのは定石だな 】
なんだかよく分かりませんけど…あの、で…なんで私はここに…
【 お前は今現実の方で大変なことになっている 】
…あ!!そうだ、確かそのお兄ちゃんらしき疾玖って人に殺したいくらい憎いとか言われて力一杯蹴られて…そういえば青龍さん、なんで封印の器は女の人じゃないとダメなんですか…?
【 青龍さんはよせ。名前くらいある。敖光( ごうこう )と呼べ。‥お前達には元々特殊な血が流れている。そして女だからこそ私達を封印できる。女は子を身籠るだろう 】
確かにそうですけど……って、ちょっと待った!私もしかして死んだんですか?!
【 ここは天国じゃない、お前の意識の中の私の封印されている精神世界のようなものだと言っただろうが 】
よ、よかったあ…
【 …性格はシキミ寄りだな 】
そ、そうなんですか?お母さんのシキミさんって一体どんな人…
【 誰か来る気配がするな…ああ、疾玖の気配はもう感じないから安心しろ。そろそろ現実に戻す】
えっ!?もう!?
【 それと、疾玖には気を付けておけ。ではまたな 】
ちょっと待って!!私まだ聞きたいことが…!!








「壁が酷い有様だな…コトメは大丈夫か?」
「……息はありますし、折れてはいませんが…とにかく早く病院へ…!」

どたどたとが何人かが走り回る音が聞こえて目を開けようとした。‥が、最早今の私にそんな力は残っていないらしい。先程見ていた筈の敖光と言う青龍と不思議な空間は、視界からなくなっていた。いや、実際に見ていたわけではないかもしれないが確かに覚えている。長い体と青い鱗、髭、威圧感でできたような鋭い目。よく分からないけどぐらりと動かされた体に自分が担ぎ上げられたのを感じた。ここ2、3日で自分のことを一気に知らされすぎた気がするんですけど。…そして同時にぽつぽつと思い出されるのは、やはり私の過去を知っていたシカマルの顔。

いやいや、こんな時に限ってなんでシカマルの顔ばっかり浮かぶの!疾玖とかいうお兄ちゃんに命を狙われているだとか青龍の封印の器のこととか、もっと考えることはたくさんあるはずなのに。

「中忍待機室で何者かに襲われたようですね」
「…お前、セナを呼んでこい。そいつの治療はセナにさせる」
「え?でもセナさんは今別の患者さんを診て…」
「いいから呼んでこい!!」
「は、はい!」

何故突然怒鳴られたのか分かっていない(もちろん私も分からない)看護婦さんは、恐らく綱手様だと思われる人物の声に慌ててその場から出て行った。どうやら私は無事病院に運び込まれたらしい。バタンという扉の音が聞こえてきて静かに息を吸い込むと、呆れたような綱手様の吐く息の音が聞こえた。

「意識はあるんだろ。瞼が開かないのか?」
「…あ……、そうみたいで…すみません…」
「お前が下手に嘘をつけるはずもないか………中忍待機室で何があった?」
「……お兄ちゃんに、会いました…」
「!」

見えないから分からないが綱手様が相当びっくりしているのが空気で分かった。そりゃそうだよね、私以外の日暮硯一族は死んでいると言われてたんだから…

2014.05.29

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