心の真髄

「なんかって…なんだよ」
「なんでお前が質問すんだよ。質問してんのは俺だろ」
「そんなこと言うってことはお前こそコトメとなんかあったんじゃねーの?」
「…」
「なんだよ、言えっつーのめんどくせー」
「…今日のコトメなんっかおかしかったんだよ。…触れないようにしてたけどお前のことだし気付いてんだろ?コトメの気持ち」
「キバ君…」
「らしくねーじゃねぇの。普段言い寄られる女からは上手いこと逃げてる癖に、コトメから逃げるようなマネは絶対しないだろ」
「あいつは幼馴染だ。簡単に切れる関係じゃねえ」
「好きじゃないならはっきり言ってやれよ。簡単に切れる関係じゃないなら簡単に壊れもしねーだろ。コトメが可哀想だぜ」
「…」
「それとも、本当は意識してるわけ?」
「なんでそうなんだよ」
「じゃあお前はハヤさんとコトメと同時に危険が迫ったらどうすんの?」
「一々天秤にかけんな。比べられることじゃねーだろ」
「……ネジ兄さんなら…」
「?」
「何があっても、まずハヤちゃんに手を伸ばすと思うよ…だって、きっとコトメちゃんにはいつだってすぐ手を伸ばしてくれる人がいるって、分かってるから…それ、誰だと思う…?」
「…」
「シカマル君、だよ。アカデミーに入学した時からコトメちゃんをずっと見守ってたのは、シカマル君だったから…」

おずおずと会話に入り込んできたヒナタに俺は思わず顔を顰めた。‥別に、優しく身守ってたつもりなんか…。元々木の葉の奴じゃなかったし親はいねーし、親父もかーちゃんも受け入れてたし…心配じゃなかったのかって聞かれたら、それは嘘だ。昔からドジな奴で泣き虫で怒りっぽくて、よく笑うし声でけーしめんどくせーし、でも気付いたらなんかいつの間にか世話焼いてたっつーか…

「ヒナタ、俺コトメの様子見に行ってくっからシカマル見張っててくれよ」
「あ、うん」
「おい」
「心配しなくても状況くらい伝えにきてやるよ。赤丸ー行くぞー」
「ワンッ!!」

ニヤッと含み笑いをして出て行ったキバに舌打ちすると、深く溜息を吐いた。キバやヒナタは俺がハヤさんを好きなことを知ってる。そしてそんなキバと言えば、俺とは種類が違う意味での"好き"という感情をハヤさんに持っている。なんつーかあれだ、アイドル的な意味らしいと言っていたか。忍がアイドルってなんだよ、忍んでねーし。

「…頭痛、大丈夫?」
「あー…なんか別の意味で頭いてーわ」
「あの…シカマル君は、ハヤちゃんの何処が好き、なのかな…」
「………ネジやヒナタにだけ向ける笑顔を、俺の前でも向けてほしいって思った」
「じゃあ、コトメちゃんは…?」
「だから俺はコトメを好きなわけじゃ…」
「ハヤちゃんを好きだって思ったらコトメちゃんをそういう目で見れないんじゃなくて、見たらいけないって思ってる?」
「!」
「昔みたいにもっと真っ正面からコトメちゃんと向き合って、自分と向き合ってみたら、どうかな…」

ぎゅっと膝に置いた手を握り締めるヒナタに、ごくりと喉を鳴らした。口を閉ざした自分の中でよくわからない感情がぐるぐると渦巻く。

くっそ、なんなんだよ…!!‥いや、とりあえず今はコトメが運ばれたってことの方が気になる。護衛を請け負ったばっかりなのにぶっ倒れて記憶もねーし、そんであいつも病院に運ばれてるし、守れもしねぇで何やってんだよ俺は…。ぼふり。布団に右手の握り拳を投げ置くと、ギリリッと奥歯を噛み締めた。

2014.05.27

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