記憶の消失

「あー…頭痛ぇ……つーか、ここ…」
「お前がさっき外でぶっ倒れてたからわざわざ運んできてやったんだよ」

目が覚めると視界に入ってきたのは、同期のキバ、ヒナタ、そして医療忍者のセナさんだった。ふと周り見渡せば白の壁と白の天井。真っ白な布団。それを見てここが木の葉病院だということに気付いた。いや、それよりなんかすげー頭痛ぇ。あ"ー…と小さく情けない声を出しながら額に手を当てていると、心配するようなヒナタの目線に気付いて顔を上げた。

「なにか、あったの?」
「へ………?……なにか…ってなんで?」
「だから、お前外で1人ぶっ倒れてたんだよ!なんかあったんじゃねーかと思うのは当然だろーが!」
「ワンッ!!」
「何も覚えてないのお?」

3人+1匹の心配と困惑が混じっている顔を見て、思わず俺は眉間に皺を寄せたる。‥ちょっと待て。俺今日一体何してた?朝起きて適当に雑務片付けて、火影室に呼ばれてそこでコトメと会って、したらなんか喧嘩みたいになっちまって…俺は護衛だっつってんのにいらねえとか言うし…つかいらねえじゃねーんだよ。馬鹿かアイツは。…ってそうじゃねえよ。それから俺はコトメを探しに行ったはずだ。どこに?どこに探しに行った?俺は"どこに"コトメを探しに行ってそれから"どうした"?

「お〜いシカマル〜?」

考えても考えても、コトメを探しに出た後からの記憶が思い出せない。そこだけ切り取られてしまったような感覚に違和感を覚えるも、頭の痛さが勝って考えるのをやめた。

「あー…全然覚えてねーわ…それよりセナさん頭痛薬かなんかもらえねーっスか?すっげー頭痛ぇ…」
「ほらあ、やっぱり転んで頭打ったんだよお。その衝撃で一時記憶喪失なんじゃない?そのうち何があったかも思い出すでしょ〜」
「なんだよまじかよ…シカマルでもそんなナルト並みのドジすんのか…」
「でも…そうって決まったわけじゃないと思うよ…?」
「心配して損したぜ…なー赤丸」
「ウウー…」

セナさんに錠剤と水の入ったペットボトルを手渡されると、徐に口に入れてごくごくと飲み干した。…なんっでこんなに頭痛ぇんだよ、朝は別になんともなかったのに。大体倒れてたってなんだよ、意味わかんねー。

「すみませんセナさん、ちょっといいですか」
「ふあ?」

がしがしと頭を掻いていると、静かに病室の扉を開けて手招きをする医療班の一人がセナさんを呼んだ。

「先程また患者が運ばれてきたんですが…その、5代目様がセナさんにと…」
「ええ〜?なあんでえ??」
「私達には話せない事情があるみたいなので…」
「なあにそれ?誰よその患者ってえ」
「日暮硯コトメさん、だそうです」
「え?」
「はぁ?!」
「…は?」
「…わあかった、すぐ行きますう〜」
「おい…ちょっと待て、コトメが運ばれてきたってどういうことだよ…!」
「私もまだ状況を把握していないんです…中忍待機所で倒れていたとしか伺っていないので…」
「コトメは今どこに「はいはいは〜い、シカマルはまだ動かないでねえ〜。キバとヒナタちゃんシカマルよろしくっ!」おい!…ッて…!」
「だ、だめだよ急に動いたら…!」

俺が伸ばした手をヒナタが慌てて押さえると、キバがセナさんに軽く返事を返していた。待て、コトメになにがあったんだよ!

「…なあ、お前コトメとなんかあった?」

そう言おうとした瞬間、セナさんを見送ったキバが俺に視線を向けて口を開いていた。

2014.05.24

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