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優しい音がする。

ふかふかの何かに包まれていると気付いた時、既にもう朝だった。とんとん、とかことこと、とか、感じたことのない緩やかな静けさ。むくりと起き上がってみると、真っさらな布団とその向こうから見えたグレーのスウェットパンツ。‥‥の、上は上半身裸だ。

「‥あ、さひ、?」
「あ、起きちゃった?」

私の好きな顔で柔っこく笑った旭は朝御飯の準備をしているのかもしれない。そんなの私の仕事なのにと慌てて掛け布団を引っぺがしたけど、すうっとひんやりした風を直で受けて我に返った。‥着てない、ちょっと待って、私なんにも着てない!

「ちょっ‥さ、流石に服着なよ、」
「わ、分かってるもん‥!」

昨日、旭に剥かれるように取られたピンク色の下着はベッドの下に放り出されていることに気付いた時には遅かった。自分がやったくせに顔を真っ赤に染める旭と言ったら、‥恥ずかしいを通り越して可愛い。可愛すぎる。てかそっちだって上半身裸じゃんか、なんてわあっと叫んで見れば、ごめん、‥ちょっとまだ熱くって‥なんて言われるものだからたまらない。

珍しく余裕のなかった姿を見たのは、多分2度目くらいだ。お酒で少し緩くなっていたのかもしれない、いつもより強く押し付けられた手首だったりとか、ぎらりと獲物を捕らえるような目付き、どろりとどこまでもずぶずぶ沈んでいくような彼とのセックス。‥嫌いじゃない、嫌いじゃないしむしろ好き。かなり激しかったせいで腰は痛いけど、今思い出してもまだ疼くみたいにきゅんとした。

「ごめん、‥昨日俺、ハメ外しすぎたよね、」
「え?」
「途中でダメだって何回も思ったんだけど、‥可愛いこと、言うから‥」

それは暗に私が悪いと、そういうことを言っているのだろうか。いや別に、私が悪いと言ってくれても全然いいんだけどさ。欲情する顔まで、旭ってば全部かっこいいんだもん。しょうがないよね、うんしょうがない。掛け布団で身体を隠しながらごそごそとホックをつけて、暖かいフリースのプルパーカーとズボンを身に付けた。それ、なあに?後ろからぎゅうと抱きついて後ろからフライパンの中を覗き見ると、まあるい何かがふつふつと焼けているのを見て思わず声に出た。

「パンケーキ!」
「寝る前に、パンケーキ作ってくれたら許してくれるって言ってたからさ」
「そんなこと言った?」
「ええ‥覚えてないんだ‥」

なんだよー。ほんの少し悔しそうに笑って、ほんのり卵の匂いが漂う掌で私の頭を撫でた。とりあえずもう出来るから。その言葉にぴん、とない筈の尻尾が立ったみたいにわくわくした。旭って料理上手なんだよね、すごく美味しいの。

「バナナとチョコソースかけたい!」
「一昨日買ってきてるよ」
「痒いとこに手が届く〜!」
「同棲も半年経つからね」
「ふふふ」
「どうかした?」
「旭、ちゅーしよ、」

ていうか、したい。その言葉にほわりと笑って、うんって言いながら顔が近付いた。ちゅっと触れて、笑っちゃって、そしてまた触れる。耳にも頬っぺたにも唇が落ちてきて擽ったいなあ。そう思っていたら、いつの間にかぬるりと舌が下唇を叩いて、割って入ってきて少し苦しい。

「 あっ、あさひ、ね‥‥食べよ ?」
「んー‥ごめん、‥やっぱり後にしない?」

いつでも作ってあげるからって抱き上げられたその後ろでは、我こそはと主張していたパンケーキが湯気をたてている。ちゃんと食べてあげるから、もうちょっとだけ待っててね。

手作りパンケーキ

2018.01.29