キンコンと、もう聞きなれたチャイムが午前中全ての授業が終わったことを告げる。先生が教室を出ていくと同時にガタガタと騒ぎ出す生徒たち。ようやく訪れたオアシス、昼休みの時間。
『キラー!』
「ああ」
私はキラーの席までお弁当を持っていく。ちなみに、私は前から二番目の席でキラーは一番後ろの席。そしてキラーの前の席がキッドの席。もっと言うと、キッドは授業が終わってすぐに走ってこの教室を出ていった。購買にパンを買いに。
今は持ち主のいない机を反転させて、キラーの机と合わせる。そして今はきっと隣のクラスに行っているキラーの隣の席の椅子を借りて座る。
『今日はキッド、パンゲットできると思う?』
「……いや、どうだろうな」
『私はねーなんだかんだでパンをもって教室に来ないと思うんだよねー』
「違いない」
私はお弁当の包みを開いた。キラーもほぼ同時にお弁当の包みを開く。
『……相変わらず美味しそうなお弁当だね、キラー』
「そう、か?」
私も、そしてこのキラーもお弁当は手作りだったりする。といっても私のお弁当の中身は4割くらい冷凍食品に頼っていたりする。このカップグラタンとコロッケとか、そうだ。
でもキラーは違う。
お弁当男子よろしく、完全手作り。形が綺麗なだし巻き卵。カラッと揚がった唐揚げ。マヨネーズの割合が見るからに完璧なマカロニサラダ。焼き加減抜群、ベーコンのアスパラ巻きなどなどなど……。私のお弁当が恥ずかしくなってしまうくらい。
『うぅ……』
「?」
私はうめき声を上げながら、さっとキラーの卵焼きを口へと運んだ。
「あ」
『……うまっ』
「……欲しいなら欲しいといえばいくらでもやるのに」
『だってぇ……』
なんか、悔しいというかなんというか。
別に、料理が上手くなりたいわけでも料理が趣味だし、というわけでもない。でもこうして差を見せ付けられると悔しいというかなんというか。わかるかな?
特に、多少気になってる異性の手前、こういったところは多少気になるじゃないですか。
『ずるい』
「何が?」
『なんか、キラー、私のもってないもの全部持ってるし』
「そうか?」
『そう』
「そうか」
そういうとモグモグするキラー。
まあ、すごく他人事ですけども。
「……弁当、俺が作ってこようか」
『……なんですと?』
「いやならいい」
『え、えと、あの、キラーさんが私なんかのためにお弁当を作ってきてくれると?』
「……」
キラーの無言は肯定だ。
ああ、もう、完全に負けたよ。
『お願い、できます?』
「ああ、わかった」
キラーはふわりと笑った
お弁当は手作り
女子力高すぎです。キラーさん……
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