ピッピッピーッ!ピッピッピーッ!
最近の子供っていうのは一生懸命という言葉を知らねえみたいで、授業一つとってしても適当なやつらが多い。それが特に顕著なのがこの体育の授業。
運動部のやつらはまだしも、文化部や帰宅部の連中は運動が嫌いなのかめんどくさいのか一生懸命やろうとしない。
下手でも下手なりに一生懸命やれば評価だって高いんだがな。
俺は口にくわえたホイッスルをリズム良く吹きながら周りを見渡した。
ほら見ろ。あそこの女子の塊なんかすげぇ適当。ほんと、みてるとイラついてくる。あんなの見るくらいだったらサボってくれた方がいっそ清々しいもんだぜ。と思う。
また見渡す。
「(ん、あれは確か、名字?)」
目に入ったのは一人の女子。たしかこのクラスの学級委員長をやってるやつで、真面目なやつだと教師が口を揃えていうような奴だ。目の前の彼女もそれを体現するかのように真面目に運動をしている。
でも運動は苦手なのか少し動きはぎこちない。でも一生懸命取り組もうとしている姿勢に俺は感動した。
「名字。おつかれさん」
『あ、原田先生』
授業が終わったあと、出席簿を渡すためにという口実を下に名字へと話しかけた。
運動をしたあとだからか、少し頬が染まっていてそれがまた……って俺は何を。
「これ、出席簿」
『確かに受け取りましたね』
「名字はいいな。授業を真面目に一生懸命受けてくれるから」
『そ、そんなことはないです!それに、体動かすの私苦手で……変な動きばっかりしてましたよね?』
「変じゃなかったさ。かっこよかった」
『え!?』
「人間、一生懸命物事に取り組む姿ってのはなんでもかっこいいもんだ。だろ?」
『そう、ですよね』
「ああ。その調子で頑張れよ?」
『はいっ!ありがとうございます原田先生!失礼します!』
ニコリと微笑みペコリと頭を下げると名前は校舎内へと消えていった。
「その笑顔は反則だ……」
一生懸命ですが、
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