2時間目も終わり10分後に始まるであろう3時間目。その10分間も楽しい時間にしてしまう学生っていうのはすごいんじゃないだろうか。なーんて年寄り時見たことを考える私。
次の時間は確か……
「名前!」
バンッ!っと机が叩かれて大きな音を立てる。叩かれた机からは私の筆記用具が落ちてゆく。缶ペンじゃなくてよかったってこういう時に思うよね。
『なに?カイゼル』
机を叩いた張本人。赤い髪の毛を揺らしたカイゼルに私は問いかけた。
「次の授業、宿題が出てたな!見せろ!」
『どんなジャイアニズムだよ!って相変わらずだよね……』
このカイゼル、頭はいいはずなのだ。テストだって常に上位にいる。私はいたって凡人。凡人は凡人なりに頑張っているわけだけれど。
しかしコイツ、なぜか宿題とか提出物系統を全くやってこない。その度にこうして私の机を訪れる。
『次は、アルケイン先生の世界史か。また呆れられるよ?怒りはしないけどさ、あの先生』
「だから見せろと言ってるだろ」
そしてこのカイゼルは非常に俺様であることは、すでにわかっていることだと思う。しかもそれが当たり前であると思ってる。
でもカリスマ性は本当にすごくて、こんな性格なのにたくさんの人から慕われている。
『なんでやってこないのよ』
「俺様は忙しい身だ。宿題なんてやっている暇はない」
『ソーデスカ』
はぁとため息をつく私に気がついているのやらいないのやら。
私ががさごそと机の中から宿題を取り出す。
『はい』
「なんだコレは」
『今日の宿題だよ。“フランスのワインの歴史”のレポート』
周知の事実であるアルケイン先生のワイン好き。いずれはこうなるだろうなと思っていたよ。ワインのことをレポートにするの。しかもこのレポートの評価高かったんだよな。学生にアルコール関係のレポート書かせるってどうなのかなと思ったのはきっと私だけじゃないはず。
―ビリビリっ
『……は?』
「こんなくだらんもの書けるか」
目の前で紙くずとなってゆくレポート。彼の背後に見える時計は授業開始3分前を示している。
「ふん」
『……こんの、バカイゼルぅぅぅううう!』
私は走った。授業前にアルケイン先生へとこの事実を伝えるために。
今日の宿題
今日の帰りにカイゼルには某アイスクリーム専門店でトリプルを奢らせてやろうと思います。
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