私と筧駿の関係を一言であらわすのであれば腐れ縁、だろうか。家は所謂隣同士で昔から嫌というほど顔を合わせてきたし、嫌でも相手の癖なんかがわかってしまうほど。
そんな互いの家はそれはそれは放任主義で。今もうちは“夫婦旅行”で駿の家の両親は“海外出張”だそうだ。まあそんな家だからこそ私もそして駿も好きなことに打ち込めているのだろうけど。
何が言いたいのかといえば、互いに今は家に一人の状態。仲の良い家族同士は「なら二人でお夕飯とか済ませちゃいなさいよ」なんて言い出して。部活で遅い駿のために私は自分の家で夕飯を作って待っているという図が出来上がっていた。
そうなるともういろいろめんどくさくなってきて、駿も我が家のようにうちに出入りしてる。食事もお風呂もうちで、本当に疲れているときはそのままうちで眠り込んでしまっている。
そんな生活も今日で5日を数える頃。
『うへーシャー芯ないし』
リビングで予習のノートを広げたところでシャー芯に気がついた私は近くにあったパーカーを羽織ってコンビニに行くことにした。
別に予習ができないのはいいんだけど明日の授業が受けられないのだから、今行かざるを得ない。朝は時間がないから無理。
玄関で靴を履いていると背後に気配。
「どこ行くんだ」
『あ、駿』
お風呂上がりの駿が真っ白でふわふわしてそうなタオルで頭をガシガシを拭きながら近づいてきた。
『ん、シャー芯きれちゃってさ。ちょっとコンビニまで行ってくる。あ、なんか欲しいものある??』
「……ちょっと待ってろ、俺も行く」
『は?』
放心。
私が放心している間に駿は薄手のカーディガンを羽織って隣でスニーカーを履き始めた。
『え、あ、別に欲しいものあるなら買ってくるよ?お金なら帰ってきてから払ってきてくれればいいし……!お風呂上がりでしょ?湯冷めしちゃうよ??』
「……はぁ」
私があたふたとしていればスニーカーを履き終えた駿が重いため息を吐いた。
「別に、欲しいモノがあるわけじゃない」
『え、どゆこと?』
「今何時だと思ってる、馬鹿」
『馬鹿って……9時、だけど』
「お前、女がこんな時間に一人で出歩くとか考えろ」
『え、でもすぐそこじゃん。往復5分くらいだよ??』
「ホント、馬鹿」
眉間に深い深い皺を作って駿はもどかしそうに頭を掻いていた。
「すぐそことか関係ない。その間に本当にお前に何かがあったら、俺、」
『しゅ、ん……』
きっと、想像したんだと思う。最悪のパターンを。
駿はふざけて言ってるんじゃなくて、本当に、本気で私が心配でこうして言ってくれてるんだって、バカな私は今気がついた。
『ごめんね、駿。ううん、ありがと』
「いや、俺もすまない」
『んじゃあ、一緒に行こ!』
「あぁ」
私が笑えば駿も微笑んで、その大きな手のひらで頭を撫でてくれた。
ちょっとそこまで
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