コトネちゃん中心に青春の1ページ
学ぱろ

今日が掃除当番のあたしは残念なことに、ホウキ兼ゴミ捨て役だった。
これって一番皆がやりたがらないポジションじゃない。あたしだってやーよ、と眉を下げる。仕組まれたとしか思えない。掃除ごときでよくそこまでぐちゃぐちゃ言えるなあ、とグリーン先輩なら言うかもしれないけど、あたしにとっては大問題なのだ。

さっきまで教室にいたはずのゴールドはいつの間にやら消えていた。グリーン先輩は生徒会の仕事だろうから、その隙を狙ってレッド先輩を襲撃にでも行ったんだろう。ゴールドもよくやるなあ、なんて猪突猛進な幼なじみを思い浮かべて息を吐く。せっかく手伝わせようと思ったのに。

もう一人の幼なじみはクラスが違うからこの部屋にその姿はない。当たり前といえば当たり前だけど、可哀想なあたしを手伝いに来てくれたっていいと思う。相方が休みだそうで、ゴミ箱をあたし一人に押し付けた担任を恨みながらも、両手にゴミ袋を引っ提げて教室を出た。

ゴミ集積所は校舎裏にあるから、と階段を降りていると、ふと見下ろした窓の下では男子であろう四人組が戯れて遊んでる。中学生にもなって。いつまで経っても子供だなあ、なんて馬鹿にして通り過ぎようとしたのに、その中に見覚えのある赤を見つけたあたしは目を疑った。あの赤い髪は、あたしの幼なじみに他ならない。でもあいつ、シルバーが、そんなまさか。

あのシルバーが中学生にもなってポケモンごっこだなんて。あの一歩引いて俺は大人なんだお前らとは違うんだぞオーラばんばんの、一部の人が見たら中二病ー、なんて言いそうなシルバーが。あたしですら小学生で卒業したポケモンごっこ!?
そうは思ったけれど目の前のそれは現実だった。

「いけっピカチュウ、十万ボルト!」
「ぴっかー」
「かわせフシギダネっ、はっぱカッター!」
「ダネダネっ」

しかも一緒に戯れてるのがレッド先輩にグリーン先輩、それにゴールドだったりするから、あたしってばもう唖然としちゃって。声は平坦なのに楽しそうなピカチュウことレッド先輩。そんなレッド先輩に命令出来て顔がにやけてるゴールド。それが気に入らないのか不貞腐れた顔をしながらもやる気満々らしいグリーン先輩はフシギダネに命令を叫ぶ。まあつまりは残ったフシギダネ役はシルバーってわけ。なにこれ。ゴールドはいいとしても、いつものかっこいい先輩たちはどこに行っちゃったの。それにシルバーが「ダネダネっ」て……。恥ずかしそうだけど、でも楽しそうにしてる。

「ばっかよねー、あいつら」
「リーフ先輩!」
「グリーンなんて、あたしとファイアに仕事押し付けてあんなことしてるのよ。信じらんない!」
「えっそうなんですか…」
「やってられないわ、まったく。コトネちゃんは今のままでいてねー」
「え、あ、」

はい、と紡ごうとした唇は、どうしてだか言葉を飲み込んだ。なんだかよく分からないけど、羨ましく思えたの。男の子っていいなあって。なんていうか、ずっと子供の心を持ってるみたいな。どちらかといったら、女の子の方が大人びるのは早い気がする。ほら、あたしみたいに。でも、

でも、あたしも思い出した。幼稚園のころ。小学校低学年のころ。皆でポケモンごっこしたなあって。ピカチュウ役取り合ったりしたなあって。
ああ、もう!しょうがないなあ!

「すみませんリーフ先輩。あたし急いでゴミ捨て行かなきゃなので、失礼します!」
「どうしたの?用事?」
「はい!あの、えと、あれ……」

あたしの指先を見たリーフ先輩は、呆れたように微笑んで、あたしの頭を撫でてくれた。そうして、

「うん、分かった。じゃああたしも行く。ファイアに仕事押し付けてくるわ!」
「えっ、あの、リーフ先輩っ」

引き留める間もなく、リーフ先輩は階段を一段抜かしで駆け上がって行った。
あーあ、行っちゃった。とも思ったけれど、なんだかんだリーフ先輩も混ざりたかったのかな、なんてホッとした。ファイア先輩には申し訳ないことをしたけど。

下ではまだ決着がつかないらしいポケモンバトル(ごっこ)。よーし!と気合いを入れて、両手のゴミ袋を握りしめると、あたしは階段を駆け降りた。

―――
タイトル→泳兵
ファイアが一番哀れ
(100106)

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